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2020 Fiscal Year Annual Research Report

中国における左翼文学とモダニズム文学の交錯――張天翼を中心に――

Research Project

Project/Area Number 20J00123
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

福長 悠  東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)

Project Period (FY) 2020-04-24 – 2023-03-31
Keywordsモダニズム文学 / プロレタリア文学 / リスク・コミュニケーション / 新感覚派
Outline of Annual Research Achievements

本研究は現代中国の作家張天翼の小説を、プロレタリア文学とモダニズム文学の交錯として読み解く試みである。張天翼は1922年代に創作活動を始め、1929年にプロレタリア文学の新人として文壇に登場してのちは、風刺小説や児童文学など多岐にわたるジャンルで活躍した。
研究の初年度にあたる令和2年度は、1932年に発表された短編小説「蜜蜂」を検討した。「蜜蜂」は農村の少年が姉に宛てた書簡の形式を取り、農村で起きた養蜂反対運動を描く。当時の報道を調査した結果、浙江省平湖県で1931-3年起きた養蜂反対運動「平湖蜂潮」の展開が、「蜜蜂」の筋書きと酷似することが明らかになった。
「蜜蜂」の農民は養蜂が無害であるという科学的知識を受け入れず、養蜂場襲撃に向かう。この問題は、災害学や社会心理学から発展したリスク・コミュニケーションの観点から考察した。請願の場面で、県長の高圧的な姿勢は農民の信頼を得ることができず、両者の交渉は決裂する。張天翼の「蜜蜂」は、新たな産業に対する地域住民の不安や、不確実な情報と状況に翻弄される地域社会を描いたものであると結論付けた。
得られた成果は、「張天翼「蜜蜂」における民衆運動と科学的言説の問題」と題して『日本中国学会第72回大会』(令和2年10月)で発表し、『日本中国学会報』に投稿した。
また、1920-30年代中国におけるモダニズム文学の状況を整理するために、令和2年3月に『横光利一文学会第19回大会』で発表した成果を取りまとめ、「中国における「新感覚派」の展開と変容」と題して『横光利一研究』第19号に発表した。特に、日本の新感覚派の影響を受けたとされる「水沫社」に注目し、「中国新感覚派」の名称は1934年ごろに旧水沫社の同人が分岐していくなかで、劉吶鴎、穆時英らの周囲に集った作家を指して用いられたものであることを明らかにした。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度は張天翼の短編小説「蜜蜂」を検討する予定であった。当初の予定では、年度内に中国の上海図書館もしくは国家図書館で資料調査を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症のために海外への渡航が不可能となった。一方で、オンラインによる資料公開が進んだため、日本国内から閲覧可能な資料のみで論文を執筆することが可能と判断した。年度内に成果をとりまとめ、学会誌に投稿することができた。

Strategy for Future Research Activity

次年度は張天翼の作品に見られる言語遊戯について考察する予定である。令和2年度の研究でも取り上げた短編小説「蜜蜂」は書簡体小説であり、テクストには様々な当て字がみられる。例えば「蝗虫」を「皇虫」と表記し、「衙門」(役所)を「牙門」と表記するような例は、当て字により風刺の効果をねらったものと指摘されている。しかし、同作品にみられる言語的な特徴は、風刺の範囲に留まるものではない。たとえば、農民の子どもと養蜂業者の子どもの言い争いでは、農民の子供が同音異義語や韻を踏んだ歌を歌って相手をやりこめる。次年度は、張天翼が子どもの視点から社会の矛盾を描いた作品「蜜蜂」および『大林和小林』(大林と小林)に焦点を当て、作中にみられる言語遊戯を分析する。

  • Research Products

    (2 results)

All 2021 2020

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 中国における「新感覚派」の展開と変容2021

    • Author(s)
      福長 悠
    • Journal Title

      横光利一研究

      Volume: 2021 Pages: 28~43

    • DOI

      10.20822/yokomitsuriichi.2021.19_28

    • Open Access
  • [Presentation] 張天翼「蜜蜂」における民衆運動と科学的言説の問題2020

    • Author(s)
      福長悠
    • Organizer
      日本中国学会第七十二回大会

URL: 

Published: 2023-12-25  

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