2020 Fiscal Year Annual Research Report
Reciprocal research on graph asymmetry and expander graphs
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20J00469
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐竹 翔平 熊本大学, 先端科学研究部 (工学系), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | エクスパンダ―グラフ / 内周 / RIP行列 / Paleyグラフ予想 / 漸近最良性定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度報告者はまずエクスパンダーグラフの構成に関して, Ganguly-Srivastava (2019)の内周の上界式を漸近的に達成する正則エクスパンダーをほとんどすべての次数に対して明示的に構成することに成功した. この成果は, 特定の次数に対するAlon-Ganguly-Srivastava (2020)の構成の拡張であり, また, 内周の大きなエクスパンダーを構成するという本研究の主要目標の1つを達成する成果でもある. 本成果は整数論と離散数学の国際会議International Conference (Online) on Number Theory and Discrete Mathematics (ICNTDM2020)で発表され, 現在投稿中の論文にまとめられている. 一方, 圧縮センシングなどで重要な, 高い制限等長性 (RIP)をもつ行列の構成研究にも従事した. 特に, 整数論や理論計算機科学において重要とされてきた(一般化) Paleyグラフ予想を仮定することで, 従来手法で超えることが困難とされていたsquare-root bottleneckを打破するRIPをもつ行列を構成した. これらのRIP行列に関する成果は2編の論文にまとめられ, 1編は情報理論の著名な国際会議IEEE Information Theory Workshop (ITW2020)に採択され, もう1編は現在査読中である. その他にも応用研究として, エクスパンダ―グラフに基づくcodebookや頑健性符号の構成の研究などにも従事した. これらの成果をまとめた3編の論文は投稿済みであり, そのうちの1編は, 離散数学および情報理論の国際会議The 11th SEquences and Their Applications (SETA2020)に採択された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はグラフの非対称性とエクスパンダーグラフの双方の研究課題に相互的に取り組むことにあった. 本年度はまず, Ganguly-Srivastava (2019)の内周の上界式を漸近的に達成する正則エクスパンダーをほとんどすべての次数に対して明示的に構成した. さらに, 構成したグラフの第2固有値がほぼ最適な値をとることも示すことで, 拡大定数の大きさも示した. したがって, ほぼすべての次数に対して, 大きな内周と拡大定数をもつ正則エクスパンダ―グラフの構成が与えられたことになり, 研究の主要目的の1つである, 「エクスパンダ―グラフの構成とその内周, 拡大定数の評価」が今回達成されたといえる. 一方, 高い制限等長性 (RIP)をもつ行列の構成研究にも従事し, (一般化) Paleyグラフ予想を仮定することで, square-root bottleneckを打破するRIPをもつ行列を構成した. 本成果の重要な点の1つは, 構成した行列のRIPからPaleyグラフおよびトーナメントのdiscrepancyの情報が得られることである. グラフの非対称性の研究で, Erdo"s-Re'nyi (1963)および報告者 (2017)が示したように, Paleyグラフおよびトーナメントは非対称性の上界式 (Erdo"s-Re'nyi型不等式)の等号達成のための必要条件を満たす重要なクラスである. 報告者の博士論文第6章の議論により, これらのdiscrepancyの情報から, 本研究の主要目標の1つであったErdo"s-Re'nyi型不等式に対する漸近最良性定理の改良が期待される. 以上の理由から, 報告者の研究は「おおむね順調に進展している」と評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
まずエクスパンダ―グラフの研究に関して, 今回構成したエクスパンダ―グラフの拡大定数や内周の評価の改良を検討し, これらの不変量が「ほぼ最良」ではなく, 「最良」となるのか否かを調べる. 本成果では, Alon-Ganguly-Srivastava (2020)の第2固有値の評価手法に加え, Alon (2020)らの最新の論文のテクニックの応用も検討する. さらに, Lee符号から得られるRamanujanグラフや, 同種写像グラフなど符号理論や暗号理論において構成, 研究されてきたエクスパンダ―グラフにも着目し, その拡大定数や内周の評価を図る. ここでは, 符号理論における指標和を用いた手法や整数論の幅広い知見が必要と予想されるため, 必要な知識を文献, 論文の購読や, 関連する研究集会への参加を通して吸収する. 次にグラフの非対称性の研究に関して, 2020年度に引き続き確率論や組合せ論関連の研究集会に参加し, 漸近最良性定理の改良に有用な手法の獲得に努める. また, 疎なグラフに対するErdo"s-Re'nyi型不等式や漸近最良性定理の導出も図る. 一方で, 2020年度のRIP行列の構成研究をもとに, Paleyグラフおよびトーナメントのdiscrepancyの評価を行い, Erdo"s-Re'nyi型不等式に対する漸近最良性定理の改良を図る.
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