2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J00525
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
山本 康司 龍谷大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 南北朝 / 室町幕府 / 政所 / 御所奉行 / 巻数請取状 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、南北朝期における室町幕府政所の実態を解明し、室町期以降の政所との違いを明らかにすることを目的としており、その検討を通じて、南北朝期室町幕府像の再構築や南北朝室町幕府政治史の深化を目指している。 初年度の令和二年度では、研究の土台を形成するために、政所に関連する史料を網羅的に調査・収集することを主たる目的とし、それを遂行した。南北朝期の室町幕府政所は、これまで研究が行われてこなかった分野であるため、史料の調査・収集をしておくことが重要な作業として位置付けられる。 具体的には、南北朝期から室町期における古記録(日記史料)と古文書(文書史料)を調査し、政所執事や政所執事代をはじめとした政所職員の活動が記された史料や、政所職員が発給した文書などの収集を行った。その結果、政所執事の発給文書や、政所執事と密接な関係にあったとされる御所奉行の発給文書、政所の活動と密接に関わる祈祷の関連文書(祈祷命令の文書や祈祷後に出される巻数請取状など)の収集がほぼ完了した。収集した史料については、適宜、検討を加えており、発給文書における文言の使い分けなどについて知見を得た。その一方で、刊行史料では不十分な点があったこと、政所と足利将軍家の家政運営のあり方を関連して論じる必要があることなど、以後の検討課題も明確になってきた。 そのほか、史料調査を進めていくなかで、予定にはなかった発見もあった。具体的には、室町幕府の御倉やその出納に関する史料や、政所吉書に関する史料などの発見である。これらは政所に密接に関わるものであるため、調査を継続し、研究のなかに組み込むことにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に示したように、本年度は南北朝期室町幕府の政所に関する史料の調査・収集を主たる目的としており、この目的はおおむね達成できたと考えている。 史料調査の計画においては、未翻刻史料の調査を予定していたが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、行うことができなかった。これについては計画の遅れであり、次年度において状況を見計らって行うことにしたい。一方、刊行史料の調査は順調に進んでおり、予定にはなかった発見もあった。そのため、全体としては、おおむね順調に進んでいると判断しておく。
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Strategy for Future Research Activity |
令和三年度は、本年度に引き続いて史料調査や分析を進めていく。新型コロナウィルス感染症拡大の影響によって未着手となっていた未翻刻史料の調査を、状況を見計らって速やかに遂行していく。また、本年度の調査・研究によって見いだされた課題を克服するために、新たな史料調査も進める。 そして、かかる史料調査と並行して、政所執事と御所奉行の関係や、巻数請取状の発給のあり方などについて研究を進展させ、その成果を論文や研究報告という形で発表することにも努めていきたい。
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