2020 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの創造性を生み出す自己家畜化現象の生理学・生態学的機序の解明
Project/Area Number |
20J01616
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
外谷 弦太 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 自己家畜化 / ニッチ構築 / 社会的相互作用 / 構造的創造性 / 鳴禽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人類に特異的な言語と社会の構造が、構築されたニッチに対する再帰的な適応、すなわち自己家畜化という形で生じたという仮説を立て、『言語に見られる構造的創造によるニッチ構築と家畜化』『家畜化されたトリとヒトの比較認知行動学』『構造的創造性を生み出す生成・評価能力』という三つの側面からアプローチするものである。 『言語に見られる構造的創造によるニッチ構築と家畜化』について、生物と環境の共進化に関するシステム論および計算論の観点から考察し、オンラインで開催された『共創言語進化学若手の会』で発表を行なった(学会発表1)。また、東京大学理学部の徳増雄大氏と共同で、人類の自己家畜化仮説およびニッチ構築について広く文献渉猟を行い、オピニオン論文を執筆した。この論文はひつじ書房から出版予定の藤田・岡ノ谷編著『進化言語学の創成』に掲載予定である(出版年未定)。並行して、 ヒトの社会的相互作用や社会関係構築についても文献渉猟を行い、そのまとめの一部であるヒトの社会的協力や協調の段階的進化・発達に関して『共調的社会脳研究会』で発表を行なった(学会発表2)。 『構造的創造性を生み出す生成・評価能力』について、構造生成能力である再帰的結合の進化シミュレーション、および構造評価能力であるメタ認知の進化シミュレーションの両面から研究を進めている。メタ認知能力の萌芽として、げっ歯類のメタ記憶能力の計算モデルを作成し、モデルを用いたメタ記憶課題のシミュレーションについて、日本動物心理学会で発表を行なった(学会発表3)。さらに、そこでの議論をもとにモデルに修正を加え、新学術領域の全体会議で発表、議論を行った(学会発表4)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、当該年度は関連研究者との会合や国際学会発表などはなかったものの、鳴禽の社会的相互作用の分析に必要な実験系の製作や、オンラインでの研究成果の発表や議論、論文投稿は行うことができた。構造的創造性の神経生理機序(至近要因)と、自己家畜化とニッチ構築の社会的動態(究極要因)それぞれについて文献渉猟も進んでおり、仮説の立案もできた。
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Strategy for Future Research Activity |
構造的創造性の至近要因と究極要因、双方の仮説が立てられたため、今後は仮説の精緻化と妥当性検証のフェーズに入る。精緻化に関しては、計算機によるマルチエージェントシミュレーションを用いて、神経生理機序と生態学的機序の両側面からアプローチする。また検証に関しては、鳴禽の神経生理と社会的相互作用の関係を調べる実験と、ヒトの神経生理と社会的相互作用を調べる研究の二つを駆使して進めていく。
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