2020 Fiscal Year Annual Research Report
高温型燃料電池の大容量化に向けた無機材料に関する直流高電圧絶縁現象の解明
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20J11541
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三井 雅史 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 絶縁破壊 / アルミナ / 水素 / 固体酸化物形燃料電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の課題を実施した。 絶縁体表面における絶縁破壊現象の調査:高温の水素中で酸化アルミニウム(以下,アルミナとする)沿面における破壊電圧と絶縁距離の関係を調査した。絶縁距離の延長に伴って,破壊機構が変化することがわかった。短い絶縁距離では特にアルミナの材料特性に,長い絶縁距離の場合は水素ガスに大きく影響を受ける可能性を見出した。本研究では,アルミナ平板上に同心円状に電極を作製しており,水素とアルミナの境界面において不平等電界が形成される。電極間では不均一な電離が生じ,同時に空間電荷層も不均一となる。そのため,絶縁距離の延長によって,電離や空間電荷層も状態が変化する。これらの要因が破壊機構の変化に影響することがわかった。 長時間の高電圧印加による材料変性の調査:高温の水素中において,アルミナに直流高電圧を長時間印加して,過度な放電や漏れ電流が電気的特性・材料性状に与える影響について調査した(以下,エージングとする)。エージングによって,アルミナ表面が白色から黒色に変化することを確認した。元素分析の結果,アルミナの一部が還元されていることがわかった。放電や漏れ電流に伴うジュール発熱によって,雰囲気温度に比べて材料表面が高温になることを確認しており,材料変性が促進されたと考えられる。電気的特性についてはエージング前後で部分放電の発生量・最大値は減少する傾向がみられた。一方で,漏れ電流はほとんど変化が見られなかった。本年度は明確な絶縁性能の低下は確認できなかったものの,より長時間のエージングを実施した場合,顕著な劣化が生じる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍のため7月まで実験ができなかったこと,またシミュレーションの進展が好ましくなく,研究計画から大幅に遅れが生じため,計画を変更した。研究計画変更後は絶縁材料の劣化現象に加えて,絶縁体沿面の破壊現象についての調査も行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
高温の水素中においてアルミナに対して直流高電圧でエージングした結果,材料変性が生じることが明らかとなった。しかし,絶縁性能の顕著な劣化は確認できなかった。また,現在の装置では絶縁破壊までの電流計測ができないという課題も生じた。今後はエージング時間の延長や装置の改良を行い,絶縁劣化の詳細な調査を行っていく。 高温の水素中でアルミナ沿面における破壊電圧と絶縁距離の関係を調査した結果,電極間に形成される電界の状態が絶縁破壊機構の変化に影響している可能性が示された。今後は材料の電気的特性や電離気体の影響について詳しく調査を進めていく。
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