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2020 Fiscal Year Annual Research Report

革新的複合技術による耐光腐食性光触媒の開発と可視光下での高効率水分解への応用

Research Project

Project/Area Number 20J20032
Research InstitutionTokyo University of Science

Principal Investigator

長川 遥輝  東京理科大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2020-04-24 – 2023-03-31
Keywords光触媒 / 人工光合成 / 水素製造 / 光エネルギー変換 / 光改質 / 水分解
Outline of Annual Research Achievements

地球規模の課題として、環境問題やエネルギー枯渇問題が挙げられる.これらを根本的に解決するには持続可能かつ、クリーンなエネルギーを生成するシステムが必要となる.光触媒を用いた水分解は、太陽光のエネルギーによってクリーンなエネルギー源である水素が生成されるため、非常に注目されてきた.代表的な光触媒であり、広く利用されている酸化チタンは、太陽光の中でも部分的なエネルギーである紫外光でしか励起することができない.高効率な水分解反応を実現するためには、太陽光エネルギー分布の大部分を占める可視光の利用が必須である.しかし、酸化物を除いた可視光応答性光触媒の多くは、光励起によって生じた正孔が自身を酸化してしまう(光腐食)欠点を持っている.そのため水分解の分野では光腐食の生じない光触媒を利用するというコンセプトの触媒設計が主流となっている.
しかし、これまで開発されてきた粉末光触媒では実用化の目安とされている変換効率10%には達しておらず、より高効率の光触媒システムが未だ求められている.そこで、利用可能波長の拡大や、より量子収率の高い可視応答性光触媒の開発が必要とされているが、長波長まで利用可能な光触媒は光腐食性を持つというジレンマが存在する.このジレンマを解消するために、本研究では光腐食を抑制し、水分解が可能になる新規触媒合成手法の確立と高効率の水分解反応の実現を目的として研究を行なった.
本年度の研究では,代表的な光腐食性光触媒である硫化カドミウムに対してpH制御を行うことで,タングステン酸カドミウムや酸化カドミウムシェルを形成する手法を確立した.さらに本手法によって作製した複合光触媒を用いることで,可視光下での純水の分解や,有機性廃棄物の分解を伴った水素生成に成功した.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

当初の予定は,酸溶出を利用した保護シェル作製法の確立と,その技術によって作製した複合体を可視光下での水分解に応用することであった.しかし,その研究過程で発見した,アルカリ条件での保護シェル形成技術を複合光触媒の作製に用いることで,有機性廃棄物の光改質に有効な光触媒を開発することができた.水分解反応は光エネルギーを化学エネルギーとして蓄積する「アップヒル反応」であるのに対し,有機物の分解を伴った水素生成は「ダウンヒル反応」である.したがって,水分解反応よりも劣った反応システムだと捉えられる場合がある.しかしながら,分解される有機物として,廃棄物を選定した場合,その処理にもメリットがあるため,より実用化の可能性が高まる.例えば,家庭から排出される有機性廃棄物は本来,回収された後,燃焼されて処理されている.この場合,廃棄物の回収にも燃焼にもエネルギーを投入しており,エネルギー的に優れたプロセスではない.本研究で開発したシステムを用いることで,廃棄物の処理に投入していたエネルギーを削減し,それを燃料として水素を生産することができる.したがって,当初予定していなかったシステムの開発を達成でき,計画以上に進展していると判断した.

Strategy for Future Research Activity

昨年度開発に成功した複合光触媒を用いた光改質反応を各種動物性バイオマスおよびプラスチックに適用する.また,その反応の解析を行い,触媒の最適化,反応条件の最適化,安定性の評価,生成物の同定,絶対的な効率の算出を行う.これによって,家庭ゴミ全般の処理を伴った水素生成系の確立を目指す.得られた結果は,論文としてまとめ,前期後半に査読付英文誌への投稿を目指す.加えて,硫化カドミウム光触媒や白金助触媒の代替となる材料の模索を並行して行う.現段階では硫化亜鉛系光触媒を検討しており,それを基盤として,各種金属のドーピングや,表面処理,合成過程の工夫を行うことで,高効率化を目指す.作製した光触媒はセルロース系バイオマスの光改質反応へ用い,ドーピング量の最適化などを行う.また,合成過程の工夫として,MOFの一種であるZIF-8を経由した触媒作製を検討しており,ZIF-8作製における濃度および温度が合成される光触媒にどのような影響を与えるのかを調べる.最終的には,これらの実験から得られた高効率光触媒についての詳細なキャラクタリゼーション,安定性の評価,光触媒反応の効率,波長依存性の測定反応溶液の影響などを実験を通して明らかにし,目的であった,環境安全性が高く,高価な白金を使用しない光触媒反応系を確立する.上記の研究が予定よりも速い進度で遂行できた場合には,酸化生成物の選択性を高め,分解後の物質にも付加価値を与えるような系の開発を目指す.現段階で検討しているのは,有機性廃棄物を完全に酸化し,二酸化炭素を発生させ,反応溶液に溶存させることで,炭酸ナトリウムとして取り出す方法である.この手法について研究を進め,次年度の研究に活かす予定である.

  • Research Products

    (5 results)

All 2021 2020

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Open Access: 1 results) Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)

  • [Journal Article] Photoreforming of Lignocellulosic Biomass into Hydrogen under Sunlight in the Presence of Thermally Radiative CdS/SiC Composite Photocatalyst2021

    • Author(s)
      Haruki Nagakawa, Morio Nagata
    • Journal Title

      ACS Applied Energy Materials

      Volume: 4 Pages: 1059-1062

    • DOI

      10.1021/acsaem.0c02530

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Elucidating the Factors Affecting Hydrogen Production Activity Using a CdS/TiO2 Type-II Composite Photocatalyst2021

    • Author(s)
      Haruki Nagakawa, Morio Nagata
    • Journal Title

      ACS Omega

      Volume: 6 Pages: 4395-4400

    • DOI

      10.1021/acsomega.0c05749

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] Photoreforming of Lignocellulosic Biomass into Hydrogen Utilizing the Entire Visible Range of Light in the Presence of Composite Photocatalyst2021

    • Author(s)
      長川遥輝,永田衞男
    • Organizer
      日本化学会 第101回春季年会
  • [Presentation] 複合光触媒を用いた有機性廃棄物の光改質による水素生成2021

    • Author(s)
      長川遥輝,永田衞男
    • Organizer
      電気化学会 第88回大会
  • [Presentation] Over All Water Splitting by Anti-Photocorrosive Core-Shell Composite Sulfide Photocatalyst Synthesized via Acid Dissolution Process 2020

    • Author(s)
      Haruki Nagakawa, Morio Nagata
    • Organizer
      PRiME 2020
    • Int'l Joint Research

URL: 

Published: 2021-12-27  

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