2020 Fiscal Year Annual Research Report
Examination of viscosity effect on magma vesiculation through laboratory decompression experiments
Project/Area Number |
20J20188
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西脇 瑞紀 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | マグマ / 水 / 減圧発泡実験 / ケイ酸塩メルト / 黒曜石ガラス / 650℃ / 飽和溶解度 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、つくばにおける実験研究を8月になってようやく始めることができた。実験開始前の4ヶ月半の間は、マグマの減圧発泡実験の先行研究を網羅的に読み進め、この分野の発展の大まかな流れを体系的に把握することに努めた。 実験開始後は、出発物質の作成段階で予定していたシリカガラスの使用が不向きであることがわかり、当初の計画の大幅な変更を余儀なくされた。しかし、過去90年間に調べ尽くされたと思われた流紋岩質黒曜石メルトにおける水の飽和溶解度が、700℃ 未満の低温領域では未決定であることが判明した。 そこで、650℃, {30, 90, 150 MPa} の系について、12月までに水の飽和溶解度を実験的に決定することができた。1月に入ってからは、650℃ の実験結果をうまく説明するために、従来の溶解度モデルの低温領域における拡張を試みている。また、この拡張の中で、そもそもケイ酸塩メルトに水はどのような物理化学的プロセスで溶解するのか?という根本的な問題にも向き合っている。思いがけず派生した研究ではあるが、手垢のついた分野に新しい見識を得られつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、実験①「ケイ酸塩メルトの粘性と気泡核形成速度の反比例関係の検証」の出発物質は、高温・高圧下で水をシリカガラスに拡散・飽和させて作成する予定であった。しかし、実験を始めるとシリカガラスは今回の研究には不向きであることがわかった。その理由として、1. 非常に硬い物質であるため、粉末やペレットを作成する労力が莫大であること、2. そもそも目的の温度 (650℃) では多量の水を加えても溶解しないこと、3. シリカガラスへの水の飽和溶解度の圧力依存性がほとんど不明であること、4. シリカガラスのメルトを天然に存在する高粘性のケイ酸塩メルトの模擬物質と見なしていたが、それらの化学組成やミクロな構造の差異に起因する物理化学的性質や巨視的物性の差異を評価できないこと、5. ゆえに天然の系に将来的にアナロジーを適用する段階で無理が生じる懸念が常につきまとうこと、が挙げられる。
そこで、過去の多くの研究で使用されてきた黒曜石ガラスを使用することにした。これにより、将来的に遂行予定である実験②「メルトの粘性と減圧速度が発泡組織の気泡数密度を支配する領域の存在の検証」の実験条件を練り直す必要が生じたが、少なくとも実験①は遂行可能であると思われる。ただし、ケイ酸塩メルト中の水の飽和溶解度の決定実験の先行研究は多数存在するが、700℃ 未満で行われた例はほとんど存在しない。そこで、650℃ 流紋岩質黒曜石メルトにおける水の飽和溶解度の圧力依存性を初めて系統的に調べた。その結果、Goranson (1931) の実験結果の外挿値や Karsten (1982) の実験結果と整合的であることが確認され、Burnham and Jahns (1962) の実験結果は過小評価である可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
650℃ 流紋岩質メルトにおける水の飽和溶解度の測定実験の結果が、従来の 700℃ 以上で行われた実験結果から外挿して予想される飽和溶解度の値よりも有意に大きいことを説明するための理論モデルを考える。特に、飽和溶解度の理論式を導出する際の仮定 (理想混合・非理想混合) の妥当性について検討する。また、測定値のばらつきの大きかった 90 MPaで再決定実験を行い、さらに高圧の 300, 500 MPaにおける実験を新たに行う。
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Research Products
(1 results)