2020 Fiscal Year Annual Research Report
スーパーカミオカンデにおける超新星背景ニュートリノ探索
Project/Area Number |
20J20189
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
原田 将之 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 超新星爆発 / 超新星背景ニュートリノ / ニュートリノ / スーパーカミオカンデ / SK-Gd |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙が始まって以降、超新星爆発によって様々な元素が生成されたと考えられており、超新星爆発機構の理解は鉄より軽い元素生成の理解に必要不可欠である。爆発の際には大量のニュートリノが生成されると考えられており、この超新星爆発ニュートリノの観測は超新星爆発気候の解明において欠かすことができない。 しかし、超新星爆発ニュートリノを観測できるほどの近傍で爆発が起こる頻度は数十年に1度ととても少なく、爆発由来のニュートリノを観測するための有用な手段として超新星背景ニュートリノ(SRN)の観測が挙げられている。SRNは宇宙初期から起きてきた超新星爆発ニュートリノの重ね合わせであり、背景放射として現在の宇宙を漂っていると考えられる。SRNのフラックスは爆発の頻度などに依存するため、SRNの観測により宇宙が誕生してからの恒星進化の歴史への理解が格段に進む。 過去にスーパーカミオカンデ(SK)で世界最高精度でのSRN探索が行われてきたが、SRNは強度が弱く、バックグラウンドに埋もれてしまうため観測には至っていない。観測にはバックグラウンドの削減や信号の検出効率の向上が課題となっている。 そこで、SRNの世界初観測を目的として、検出器にガドリニウムを導入しSRNの反応で生成される中性子の検出効率を向上させる新実験(SK-Gd)が開始された。SK-Gd実験では、中性子がGdによって捕獲され生成される合計約8 MeVのガンマ線を捉えることで、高確率での中性子信号の検出が可能になった。これにより、SRN信号の検出効率が向上し、中性子を生成しないバックグラウンドについて大きく削減されることが期待される。 現在は質量濃度0.011%のGdをSKに導入しており、2022年にはさらにGdを追加する予定である。本研究ではSK-Gd実験での2年間でのSRN探索探索を行い、最初の結果を報告することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度前半はGd導入の準備、またGd導入中や導入直後の検出器の安定性の評価を行なった。導入行程の見直しや最終確認を行い、輸送システムのテストなどを共同研究者・業者の方々と行なった。Gd導入作業自体は2020年7-8月にわたり行われ、約13.5トンの硫酸Gd八水和物(質量濃度約0.026%)をスーパーカミオカンデ検出器の超純水に溶解することに成功した。また、Am/Be線源を用いた測定も行い、中性子信号の検出に成功した。さらに、Am/Be線源測定の結果や宇宙船ミューオンによる中性子生成事象などを含めたSK-Gd実験初期の中性子データ解析の結果についてオンラインで行われた日本物理学会2020年秋季大会で報告した。 しかし、スーパーカミオカンデ検出器にGdを導入する行程そのものが内定時より数ヶ月遅れてしまったのに加え、新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた検出器較正実験の実施が困難になってしまった。よって、その代替案として純粋時の検出期較正結果を用いてエネルギー決定精度を概算し、シミュレーションに取り込むことで中性子同定手法についてシミュレーションとAm/Be線源データを使って検証することができた。 以上のことから、概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年4月現在は質量濃度0.011%のガドリニウムの導入が完了している。今後はこの濃度での中性子信号同定効率について不定性の見積もりを行い、超新星背景ニュートリノ探索での中性子信号の不定性に利用する。さらに、2021年度にはエネルギー較正実験や検出器較正実験も予定されており、より詳細にSK-Gd実験の検証が期待できる。 また、今後二年内を目処に、その倍程度導入し、0.02-0.03%まで引き上げる予定である。その際の中性子信号同定効率やその不定性についても同様に見積もりを行い、SK-Gd実験でのS R N探索について最初の報告を目指す。
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