2021 Fiscal Year Annual Research Report
Reform and Revision of the Law of Error (Mistake(s)) - from a Perspective of Common Law, Civil Law, and the Mixture of these Approaches
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20J21047
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
森 勇斗 一橋大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 錯誤法 / 契約の有効性 / 比較法 / 多国間比較法 / 混合法 / ミクストリーガルシステム / コモンロー / error-mistakesアプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度に於いては、引き続きCOVID-19警戒体制下に於いて研究を実施したため、当初の研究計画と大きく異なるが、Web会議システム等の整備・構築により、概ねスムーズに進行した。実施内容は、以下の二つに分けられる。
第一に、引き続き文献研究を実施した。文献、特に各国コンメンタール(ドイツ、オランダやスイス等)の再度の比較を通して、森勇斗「日本錯誤法の「アプローチ」的位置付け及び理論的再構成(1); error型アプローチ、mistakes型アプローチ、error-mistakesアプローチ、そして日本の錯誤のリスク転換構造」一橋法学20巻1号409-447頁(2021.4)及び同(2・完)・一橋法学20巻2号259-298頁(2021.7)の見直し・発展を図ったものである。
第二に、Web会議システムを用い、日英間での研究交流を行った。研究費の一部を謝礼として、John Cartwright教授(Oxford大学法学部名誉教授、Christ Church, Oxford名誉フェロー)に、契約の成立・有効性に関する講演及び、拙研究への直接の示唆を戴いた。その後、Yuto MORI, ’Error, Mistakes, and Error-Mistakes: A Comparative Reconsideration of the Law of Mistakes in Japanese Civil Code’ 8th Tokyo-Cambridge Law and Humanities Seminar 2021(8月28日開催、オンライン)とする報告を行った。同報告は、森の研究テーマの主眼たる大陸法型錯誤及びコモンロー型錯誤の性質的異同について、特に英語に於ける表現比較(コモンロー地域イングランドと混合法地域スコットランド)を題材に、検討を展開するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究概要」に記載の通り、2021年度に於いてはオンライン会議に於けるノウハウが発展したことにより、当初予定していた在外研究こそ頓挫したものの、その目的である各法域(特に、森は一般に大陸法圏とされる日本、コモンロー圏であるイングランド、混合法域として位置付けうるスコットランド)の研究者と意見を交わすことができた。これにより、単なる文献を読んでの肌感覚ではない、実態としての他法域研究者の視点からの示唆を得ることができたため、森の研究は大きく発展した。但し、伴って下記「今後の研究の推進方針」に記載する通り、他法域との交流を通して特に明らかになった課題も存する。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「現在までの研究進捗状況」にも記載したが、2021年度に於けるコモンロー地域及び混合法域との交流は、森の従来の問題意識、例えば、本研究題目採択以前の関連研究である森勇斗「錯誤法の再構成と日本の債権法改正に於ける「不実表示」論 : 大陸法型錯誤(Error),英米型錯誤(Mistake“s”),そしてその混合を参考に(1)」一橋研究43巻2-3-4合併号1-14頁(2019.1)及び同(2・完)・一橋研究44巻1号1-16頁で指摘したようなerrorとmistake(s)に於ける語彙的問題は、専らシニフィアンの違いに留まるか、それとも法的性質(法的シニフィエ)も異なるかという問題について、とりわけイングランドとスコットランドでは法域が異なるにも関わらず言語が共通するため、かような一般言語と法言語の対応関係についての検討が進展した。その一方で、、上記載の報告により、そもそも法的性質(法的シニフィエ)とその記号(シニフィアン)の密接不可分性から、自然言語での描写に於ける翻訳不能性(翻訳に於ける変質の可能性)も明らかとなった。
また、森が問題とする錯誤関係は、通常契約の有効性に関する部分であるが、根本的に法体系が異なっているからこそ、契約の成立、或いは更に遡って訴権的内容の検討をも必要とすることが2021年度の研究実施に於いて明白となった(なお、日本錯誤法は総則規定たる法律行為法として位置付けることはいうまでもないが、コモンローやオランダ法体系に於いては専ら、契約法の一部として存するため、本項目に於いても、契約法を主眼として記載する)。
そのため、2022年度の研究実施に於いては、①自然言語的記述に関する再検討及び②基底的契約理論に遡ってのアプローチの異同研究、が必要とされるものと結論付け、上2点につき重点的な研究を行う。
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Research Products
(4 results)