2021 Fiscal Year Annual Research Report
赤色矮星まわりのスーパーアースの大気観測とその統計的性質の調査
Project/Area Number |
20J21872
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 万由子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 系外惑星 / トランジット法 / 透過分光 / 黒点 / 赤色矮星 / 磁気活動 / 惑星の発見確認 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の中で主に以下の2つの研究に取り組んできた。 1. 大気観測に適した系外惑星を発見するため、トランジット観測(惑星が恒星の前を横切る時の減光量を見る観測)を用いて、宇宙望遠鏡TESSで見つかった候補天体が惑星であることを確認し、その性質を調べた。特に、赤色矮星星周りの系外惑星TOI-1696bを発見した(Mori et al. 2023)。この惑星は、次世代宇宙望遠鏡を用いた大気の分光観測の主要なターゲットとなる惑星である。その他、複数の惑星の 発見確認に観測・解析者として貢献した。 2. 惑星大気組成を測定するためのトランジット分光観測において、恒星黒点はシグナルを歪めてしまう影響がある(トランジット光源効果)。赤色矮星におけるこの影響の程度を探るため、サブネプチューンサイズの惑星を持つ赤色矮星K2-25の測光観測・解析を行った。観測では、LCO 1m望遠鏡に搭載された測光装置Sinistroと宇宙望遠鏡TESSを用いてK2-25の明るさをモニター観測し、その明るさの変動から恒星表面に存在する黒点の温度、分布を導いた。結果から、我々の提案・実行した観測手法を用いると黒点温度が先行研究よりも精度良く制限できることがわかった。また、スペイン・テネリフェ島の1.5m望遠鏡とハワイ・マウイ島の2m望遠鏡に搭載された多色測光装置MuSCAT2,3を用いて観測された惑星K2-25bのトランジットの測光結果から、トランジット光源効果の程度を見積もった。なおこの研究は2022年度も継続して行い、K2-25のトランジット光源効果が次世代宇宙望遠鏡による惑星大気観測では影響しうる程度であるということがわかった。2023年中に論文出版予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤色矮星周りの惑星大気観測という目標から発展させて、そのために必要な惑星の発見や恒星活動の調査を独自のサイエンスとして進めることができた。K2-25については論文出版までには至らなかったが、採用期間中に研究成果を9割程度まとめることができた。後は先行研究との比較などの議論を加え早期の論文出版をめざす。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、特に国外の研究会参加や他の研究者との議論の機会が減少してしまったが、オンラインのセミナーや会議に積極的に参加し研究交流を図った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で作成した「恒星の多色モニタリング観測による明るさ変動から黒点の温度・分布を推定する」手法を用いて、複数の赤色矮星観測に応用させることにより、より普遍的な赤色矮星の黒点温度の傾向を探る研究に発展させる。これらは「赤色矮星周りの惑星大気探査」という大目標に向かう重要な研究テーマである。また、「得られた恒星表面モデルからトランジット光源効果の程度を見積もる」手法も発展させ、実際に惑星大気観測のターゲットとなっている恒星の活動性を調べ、そのトランジット光源効果の程度を見積もる。現在、ハッブル宇宙望遠鏡などを用いた惑星大気観測のグループに加わっているため、その中で実際に、惑星観測のターゲットとなる赤色矮星についてモニタリング観測を実施・解析する予定である。
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