2021 Fiscal Year Research-status Report
ポルノグラフィにおける性的モノ化の哲学的考察――現象学的倫理学からのアプローチ
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20K00040
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
吉川 孝 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (20453219)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポルノグラフィ / 性的モノ化 / 映画 / 表現 / 現象学 / 倫理学 / 実存 / 芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も、コロナウィルス感染症の影響のため、国内外での出張による調査を進めることができなかった。そのため、性的モノ化にアプローチするための倫理学的基盤を確認することになった。具体的には、現象学的倫理学と現代倫理学の観点から、何らかの人物をモノとみなすという「認識」にかかわる倫理学の問題を考察する試みを行った。一方では、現象学的倫理学の観点から、エドムント・フッサールが認識の倫理を問題にする枠組みを検討した。他方では、英米の現代倫理学の観点から、アイリス・マードックが行為に先立つものの見方を考察する手法を検討した。フッサールとマードックとの関連についての発表を踏まえた上で、論考にまとめることができた。行為ではなく、認識の善悪を考察する倫理学は、ポルノグラフィの考察にとって重要な意味を持つにもかかわらず、その基盤や意義について研究はされてこなかった。 さらには、応用倫理学の問題として、性表現やポルノをめぐる問題を扱う手法についての考察も展開することになった。とりわけポルノの出演者のプライバシーをめぐる偏見やそのプライバシーをめぐる問題については、学術研究では慎重な対応が求められる。コンプライアンスとしての研究倫理を遵守することがどのような意味と限界を持っているのかを検討した。文献研究においても、人を対象とする場合には、理論によって現実を裁断してしまう危険があり、学術研究が水俣病事件における患者や被害者のスティグマ化に加担したこともある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルス感染症の影響により、国内外の調査を行うことができず、若干の進捗が遅れている。また、いくつかの発表を実施したが、論文や著作での成果はまだ出ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
成果にはなっていないが、論文や書籍の準備はできているので、最終年度はそれらをまとめることに尽力したい。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染症の拡大で出張ができなかったため、旅費をほとんど使わなかった。
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Research Products
(4 results)