2023 Fiscal Year Annual Research Report
Anti-naturalism of value philosophy in the early twentieth century-For reconsideration of contemporary value theory
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20K00119
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Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
九鬼 一人 岡山商科大学, 法学部, 教授 (30299169)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リッカート / 二重作用説 / プリンツ / ディルタイ / 解釈 / 唯物論 / 価値唯名論 / スピノザ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は最終報告書の作成に従事した。報告書の内容は三部にわたる。 一、九鬼の2020年度から2023年度の四年間(先の科研費研究を含めては計七年)のリッカート研究をまとめる。二、研究の一環として行われた、価値論のシンポジウム(2022年4月10日(日)開催「20世紀初頭価値論が残したもの・その歴史的な限界と射程」)を総括する。三、上記シンポの内容を踏まえた、研究協力者の価値論に関する見解をコンパクトに紹介した。一般研究者が価値論研究の奥行を読みとれるよう、また現代価値論のなかでの位置づけを確認できるよう編集された。 一に関連して九鬼の研究成果に言及しよう。この間の価値論研究は、四つの段階を経て展開された。イ)リッカートの歴史的思想形態を、主観的構成と価値実在論が混交した価値形而上学説と見なした(『新カント学派の価値哲学』弘文堂)。その場合、主観的構成と価値実在論のどちらが、試金石になるかについて紛れがある。ロ)最初、主観的構成を前面に出して、価値決断主義を(もとより非帰結主義的に)考えたが、主観的恣意性の問題が残った。ハ)それゆえ価値実在論を前提としつつ、判断作用の上階に解釈的な較正を考える価値認知主義によって打開を図った。だがこの途は価値判断における、役割相関性に鑑みて、価値的現実の逡巡的要素を無視しすぎているように思われた。それゆえ、二)暫定的に前提される認知+態度決定という価値判断の二重作用説を、リッカート解釈で注目し発展的に継承した。この図式をとるとき、構成説という存在論的前提は棄却され、リッカート解釈を脇に置いた九鬼の立場としては、価値実在論から価値唯名論へと転回することになった。こうして価値を非実体的に捉える見地を採用し、価値判断を言語的記述に託す方向へと価値論の見方をシフトした。なお唯物論的価値論の端緒として、リッカートのスピノザ講義原稿資料の解読を行った。
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