2022 Fiscal Year Annual Research Report
Influence of Marie Curie's Laboratory on Toshiko Yuasa, the First Japanese Female physicist
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20K00270
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
川島 慶子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20262941)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 湯浅年子 / マリー・キュリー / フレデリック・ジョリオ=キュリー / イレーヌ・ジョリオ=キュリー / 放射能 / 山田延男 / 小野田忠 / ラジウム研究所 |
Outline of Annual Research Achievements |
湯浅年子は日本人初の女性物理学者であると同時に、日本人で最初にフランスに正規の研究者として採用された日本人科学者である。本研究はこうした稀有なキャリアを持つ湯浅年子を、マリー・キュリーが所長をしていたラジウム研究所の女性科学者たちの伝統の中でとらえ直そうとする試みである。それは同時に、明治の西洋列強に追いつけ追い越せを目指していた近代日本と西洋の科学技術の関係を明らかにする研究でもある。 ここでは、湯浅年子の科学者としてのキャリアを追うだけでなく、同時に彼女の少し前に、やはり明治の日本人青年科学者としてラジウム研究所で放射能研究に携わった二人の日本人、山田信男と小野田忠の軌跡も追い、彼らと湯浅の共通点と相違点をジェンダーという視点から分析した。こうすることで、西洋の科学技術を全面礼賛したように見える近代日本が、じつはジェンダーと言うフィルターを通すと、必ずしもそれを日本の全国民に同様には求めていなかったことが明らかになった。 また、湯浅年子はマリー・キュリーの弟子で、コレージュ・ド・フランスの原子核化学研究所所長のフレデリック・ジョリオから指導を受けるだけでなく、その近くのラジウム研究所でもキュリーの他の女弟子から実験指導を受けた。本研究では、有名なキュリー夫妻の業績である分別結晶法だけでなく、ラジウムの原子量決定方法についても分析した。これはマリーがピエールの助言はうけたものの、ほぼ一人で開発し実験をやりとげたものであり、物理学者としての側面だけでなく、化学者としてキュリー夫妻のラジウム発見の要となった業績である。本研究はマリーの単著論文からその実験方法を明確化することで、湯浅が感動し、同時にそこから逃げ帰ったほどの高度の実験技術をマリー・キュリーとその弟子たちが会得していたことを明らかにした。
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Research Products
(8 results)