2020 Fiscal Year Research-status Report
近世および近代初期書物文化における、近世実録の位置づけに関する研究
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20K00290
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
菊池 庸介 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30515838)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近世実録 / 敵討 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナウィルスの影響により、下記の通り、進捗状況はやや遅れているが、それでも、交付決定前に施して置いた準備と合わせることにより、以下のような口頭発表(オンライン)による業績を上げることが出来た。 ひとつは、「加州敵討」物実録の諸本研究である。資料の実見できていないものが多いという制限はあるものの、本文内容から「加賀敵討」物実録群を系統立てすることができ、諸本により内容の異動、成長の甚だしいものもあることが解明できた。途中経過報告的なものであるが、口頭発表「「加州敵討」物実録の展開」を行った。 ふたつめは「キリシタン実録群」についての内容分析である。「キリシタン実録群」については、以前より研究テーマのひとつであったが、「キリシタン実録群」に描かれた、冬至の民衆のキリシタンに対するまなざしという観点から内容を分析、合わせて、キリシタンを扱う近世文芸作品にしばしば登場する人物、森宗意軒について、実録以外の作品にも目を通し、その性格付けを探った。森宗意軒については、すでに先行して研究成果を発表しているが、それを追認すると友に、若干の補足を行っている。それらは口頭発表「近世実録におけるキリシタン」として発表している。 この他に、松江城にまつわる怪異譚に注目したことから、松江藩の逸和集『雲陽秘事記』の当該記事の分析を行い、松江城の祈祷櫓が、複数の怪異譚の背景に存在していることを確認した。これについては、21年度に発表予定。また、写本の版本化の観点から、「源氏物語」「藤裏葉」巻の版本挿絵を例に、その図様の定着していく様子を追った。これについては「近世版本の挿絵に描かれた「藤裏葉」巻」として、共著『源氏物語を開く』で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やや遅れているとした原因は、なんと言っても新型コロナウィルスの影響により、当初予定していた資料(現地)調査に出張できなかったことが大きい。近世実録写本は、同じ内容と推測される諸本でも、実際に内容を確認する必要があり、今年度題材として扱う予定だった実録は、その多くが実見できなかった。 そのいっぽうで、年度後半、緊急事態宣言解除後に、多少実見できるようになったこと、あるいは、インターネット上で画像公開されているものを確認・探索しているうちに、こちらの知らなかった資料を探し出すことができたこと(そのうちのひとつは独特の特徴を備えた興味深いものであった)などから、出張できない分の遅れを多少なりとも取り戻すことができたと考えている。 以上の理由から、「(3)やや遅れている。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染状況をにらみつつ、昨年度停滞していた原本の実見に赴く。また、関係資料を所蔵する機関によっては、複写物を取り寄せたり画像データなどを確認していくこととする。 この他、出張調査に出られない代わりに、研究室等でのデータ整理・分析の時間を多く取って行きたい。
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Causes of Carryover |
大きな理由には、新型コロナウィルスの影響により、出張調査を見合わせ、旅費が使用できなかったことが挙げられる。また、同様の事情で研究遂行の体制を考え直す必要があり、物品の購入に遅れが生じ、翌年度に廻さねばならなかったものも少なからずあった。 今年度は、新型コロナウィルスの状況を見ながらも、出張調査を再開させること、購入を見合わせていた物品等の購入を行っていくことで、対応していきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)