2021 Fiscal Year Research-status Report
近世および近代初期書物文化における、近世実録の位置づけに関する研究
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20K00290
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
菊池 庸介 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30515838)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近世実録 / 活字翻刻本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に続き、明治初期から中期にかけての、実録活字翻刻本および実録のダイジェスト的なものとして刊行された絵本のデータ入力を中心に行った。明治15年から刊行されている栄泉社「今古実録」シリーズがひとつの出発点になると仮定し、本シリーズに収載されている実録を挙げ、それらを手がかりとして、書名、題材などからキーワードを設定し、国立国会図書館や国文学研究資料館などのデータベースから同題材と推定できる実録を導き出し、書名や巻冊数、装丁、序文執筆者、刊行年、刊行元、刊行地、売り捌き店などのデータを入力している。 この方法を用いることにより、「今古実録」シリーズのラインナップを把握することができ、近世実録のうちどの実録が近代以降に翻刻されたかの目安を得ることができた。また、「今古実録」シリーズ以降、あるひとつの題材に基づく実録が、どのような形で他社から刊行されたかを知ることができた。その形は実録によって異なるが、たとえば刊行元、売り捌き店、序者などの情報から、何らかの傾向が伺うことができる可能性がある(これは次年度以降も継続して考えるべき課題でもある)。また、これらの調査に関連して、関係資料・論文類の収集のため、国会図書館・国文学研究資料館への出張も行った。 この他、近世実録の近代以降の受容の手がかりとして、松江城に伝わる怪異譚を例に、その伝承の生成、発展、展開について調査し、論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時に企図していた、本研究の軸のひとつである、近世実録類および近代以降の活字翻刻本実録の調査のための出張が、新型コロナウィルスの影響によって、思うようにできなかったことが挙げられる。ただし、国会図書館をはじめとする各所蔵機関が公開する画像データによって、ある程度はカバーできた。よって「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究期間の最終年度に当たるため、これまでに収集したデータの分析を中心に行う。たとえば「今古実録」シリーズ以降、どのぐらいの間をおいて他社から刊行されているか、多く刊行しているのはどの出版社かなどについて、検討していきたい。また、実録の出版がどのようなジャンル意識のもとで行われているかの問題についても、その出版社の商品ラインナップなどから手掛かりを得ていければと考えている。それらを踏まえて、近代において出版された実録の位置を考えていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、複数箇所の県外出張を取りやめにせざるを得なかったことが、次年度使用額が生じた第一の理由である。今年度は昨年度よりもやや沈静化している(現在)ため、一昨年度・昨年度と見合わせていた調査をできるだけ再開させる予定である。また、収集する必要のある資料が当初の試算以上に発表されていることから、それらの購入も検討している。
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Research Products
(1 results)