2022 Fiscal Year Research-status Report
近世および近代初期書物文化における、近世実録の位置づけに関する研究
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20K00290
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
菊池 庸介 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30515838)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近世実録 / 近代初期 / 活字翻刻本 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の具体的な実績は、一つは徳川家康と織田信長による、いわゆる「清須同盟」と呼ばれる事跡について、近世及び近代初期・中期の文献を調査した。その結果、近世前期の段階では「清須同盟」についての具体的な記事は見出せず、近世前期に成立した『三川記』が、「清須同盟」の話の素地となるようなものが見出せ、それよりやや後に作られたと目される『三河記』において、「清須同盟」が形成されていることが判明した。さらに幕府編纂の徳川創業史『武徳大成記』では『三河記』を踏まえつつ記事の選択を行い、「清須同盟」伝説が発展・定着をみせたことがわかった。なお、『武徳大成記』編纂にあたり各家に提出させた由緒書(「貞享書上」)において、植村家が植村家政の「清須同盟」時における活躍を記していたため、この逸話も『武徳大成記』に採用されることになり、その後近代まで広く読まれた『常山紀談』や、さらに大正期の少年向けの伝記にまで取り込まれていることが明らかになり、「清須同盟」の別の側面も歴史として定着していったことを確認することができた。これらの成果は『家康徹底解読 ここまでわかった本当の姿』(共著)の1章として報告した。 また、「崇禅寺馬場の敵討ち」にまつわる実説・実録・活字翻刻本について、国文学研究資料館や京都府立京都学・歴彩館、九州大学附属図書館などへの実地調査および資料収集を行った。これらの結果(まだ調査は途上にあるが)、近代初期に刊行された「今古実録」シリーズ『敵討崇禅寺馬場』が元にした実録写本を特定することができ、また、「崇禅寺馬場の敵討ち」を扱った実録が、それほど多くは残っていないものの、それぞれ内容が異なり、複雑な本文系統を持っていることがわかった(本文系統の整理については今後の課題である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染状況および本務のスケジュールとの兼ね合いで、2022年度の出張調査を見合わせたことが複数回あったこと、また、研究室移動につき、研究の遂行に必要な資料を整理する棚の購入を検討したが勤務先から認められず、その相談に時間を要したことと、棚が不足しているため資料の整理が進まず、結果として作業の遅れの一因となったことなどが、理由として考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度については、新型コロナ感染症が5類に引き下げられたことから、資料調査の地域を拡げていきたい。そのいっぽうで、研究初年度よりコロナの影響のため研究遂行に遅れが出ていたことでもあり、とくに近代初期の活字翻刻本の調査収集については、対象を網羅的に広げるのではなく、実録の扱っている題材あるいは個別の出版社等に絞るなど、範囲を限定した中で、近代初期活字翻刻本実録の特徴を明らかにしていきたい。 この他、今年度中にある程度調査をしていた「崇禅寺馬場の敵討ち」を扱った実録については、未調査のものの調査を続けていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最も大きな理由は、新型コロナウイルス感染症の影響により、複数の出張を見合わせたためその分の旅費の残高が生じたことが挙げられる。 次年度については、今年度までに行くことの出来なかった場所に調査に赴くことで、順調に助成金を使用していく。この他、2022年度中に入手できなかった資料についても購入する予定である。
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Research Products
(1 results)