2022 Fiscal Year Research-status Report
上田秋成およびその周辺の俳諧研究のための資料整備と発展的研究
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20K00294
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
近衞 典子 駒澤大学, 文学部, 教授 (20178297)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清登 典子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60177954)
大石 房子 (金田房子) 清泉女子大学, 付置研究所, 客員所員 (80746462)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 上田秋成 / 俳諧 / 大坂騒壇 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度も前年に引き続き、zoomを利用したオンラインで全10回の研究会を開催し、秋成の関わる連句集の注釈作業を行った。 第11回研究会(4月16日)では「鐘冴る」百韻37~60句注釈、第12回研究会(6月4日)では「鐘冴る」百韻61~90句注釈、第13回研究会(7月16日)では「鐘冴る」百韻91~100句、「蝶鳥の」百韻序・1~20句注釈、第14回研究会(8月20日)では「蝶鳥の」百韻21~50句注釈、第15回研究会(9月19日)では「蝶鳥の」百韻51~83句注釈、第16回研究会(10月8日)では「蝶鳥の」百韻84~102句、および「稀人や」歌仙1~5句注釈、第17回研究会(11月21日)では「稀人や」歌仙6~36句注釈、第18回研究会(2月11日)では「芽を出して」七十二候1~29句注釈、第19回研究会(3月4日)では「芽を出して」七十二候30~51句注釈、第20回研究会(3月25日)では「芽を出して」七十二候52~72句、および「子たる人」歌仙1~8句注釈を行った。 毎回、メンバー各自が担当個所の研究成果をまとめた資料を提出、それに基づき発表・討議を行った。また新たに発掘した資料や研究成果は、メール等も利用してその都度全員で共有した。研究会での討議を反映した修正原稿を後日、研究代表者が集約、蓄積している。2022年度は従来見過ごされてきた一句を新たに見出し、雑誌に成果発表した。 研究期間も3年目に入り、秋成周辺の大坂俳人たちの連句の特徴、蕉風との詠風の違いなどが徐々に把握できてきたこともあり、注釈のスピードが上がってきた。2022度中の読了を目指したが、未だ注釈の済んでいない歌仙3作品や歳旦などが残っている。また研究過程で、当初は研究対象とはしていなかった高点集にも目配りする必要性を感じたことから、あと1年研究期間を延長し、よりよい成果を目指すこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで1~2ヶ月に一度のペースで精力的に連句集の注釈作業、およびそれに関わる研究を進めてきた。しかし、研究開始当初に新型コロナの流行があって研究開始の時期がずれ込み、オンラインでの研究会の体制を構築するまで時間がかかったこと、また図書館等の閉館により資料収集をすることができず、オンラインで資料を見る以外に方法がなかったこと等の外的条件に加え、研究対象作品における、連句の一般的なルールにはずれた詠みぶりや、楽屋落ちと思しき難読の句の解釈等に難儀し、作品理解や新たな調査に多大な時間を費やしたため、当初の研究計画より進捗が遅くなった。 それでも、研究を進める過程で、秋成周辺の大坂俳人の詠法が徐々に理解されてきたこともあり、2022年度はこれまでより大幅にスピードアップし、順調に注釈作業を進めることができた。具体的には、「鐘冴る」百韻、「蝶鳥の」百韻、「稀人や」歌仙、「芽を出して」七十二候の約300句の注釈を完了し、次の「子たる人」歌仙に着手したところである。 これまでの3年間で、歌仙(36句)7作品、百韻(100句)2作品、七十二候(72句)1作品、計500句余について注釈を積み重ね、九割方は注釈作業が終了した。しかし当初の出遅れが影響して、まだ歌仙3作品(「子たる人」・「いざさらば」・「年の夜の」)、小説等に散見される付合(3)、および歳旦三つ物(2)が注釈未了で残っている。また、研究を進める過程で、秋成周辺の連句を理解するためには、当初の計画にはなかった高点集にも目配りする必要性を感じた。 そこで、研究期間を1年間延長し、残る連句の注釈を完了した後に、引き続いて高点集(『青雲士』・『皆面美』)の注釈を行う計画を年度途中で立てた。現在、連句研究の傍ら、高点集研究に向けて資料収集・整備等を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度はいよいよ最終年度である。上記項目「現在までの進捗状況」で述べたように、本科研で研究する予定である対象作品のうち、まだ歌仙3作品(「子たる人」・「いざさらば」・「年の夜の」)、小説等に散見される付合(「よしみの竹田」・「まれ人に」・「鶏を」)、および歳旦三つ物(「我宿を」・「□筆は」)が注釈未了で残っている。また、これらに加えて、新たに高点集(『青雲士』・『皆面美』)の注釈に取り組む計画を立てている。この1年間は、上記課題に精力的に取り組み、これらをすべて完了する予定である。 まず、前半期、できれば8月末までに連句関係(歌仙3作品、付合、歳旦三つ物)の注釈を完了する。その後、高点集の注釈作業に取り組む。すべて終了した後には、これまで蓄積してきた研究成果を改めて一連のものとして再点検、必要があれば修正を加え、より注釈の精度を上げるよう努めるつもりである。 また、2023年5月より新型コロナに対する対応も改まり、調査に行きやすくなったため、夏休み等を利用しての各図書館の所蔵作品の調査や、対面での研究会の開催を企画している。これまでオンラインで研究成果を積み重ねてきたが、直接に顔を合わせ意見交換することで、より問題点を掘り下げ、充実した討議を行なうことができるのではないかと期待している。 年度末には、可能であればシンポジウムを開催して、本科研で明らかになった秋成およびその周辺の俳諧の特徴についての研究発表を行って、世に広く研究成果を公開し、その意義を問いたいと考えている。また、本科研課題は平成28~30年度の科研「上田秋成の俳諧研究のための資料整備と基礎的研究」(課題番号16K02418)を引き継いで発展させたものである。本科研終了後、前科研の科研報告書「上田秋成発句全注釈(稿)」と、本科研での成果を合わせ、秋成俳諧の注釈書としてまとめ、刊行することを計画している。
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Causes of Carryover |
2022年度も、それ以前と同様、新型コロナの影響を勘案して、研究会はすべてオンラインで実施、交通費等を支出することがなかった。また地方の図書館など、作品所蔵機関に出張して現物確認することもできなかった。 2023年度は最終年度でもあり、また5月に新型コロナの扱いが5種に変更になることもあるので、これまで実施できなかった地方の図書館等に出張しての調査研究や、対面での研究会の開催を実現する予定である。また、年度末には、可能であればシンポジウムを開催し、研究成果としての注釈書や秋成俳諧について得た知見を広く公開したいと考えている。そのため、交通費、人件費や物品費を確保しておく必要があった。
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