2023 Fiscal Year Research-status Report
日本統治期における児童文化の伝搬と受容に関する比較と調査研究
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20K00296
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
米村 みゆき 専修大学, 文学部, 教授 (80351758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 浩司 追手門学院大学, 文学部, 教授 (90185538)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 宮沢賢治 / 児童文学 / 戦時期 / 受容研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
単著の論文「旅マタギと資本主義の論理ーー『なめとこ山の熊』における〈ケア〉の精神」を執筆した(同論文は、単著『宮沢賢治を創る人々』(七月社、再校中)に所収される)。 この論文の調査のために、兼業マタギの人々にインタビューを行ったが、宮沢賢治の童話が戦時中に受け入れられていった大きな要因の一つに、宮沢賢治が当時の岩手の社会状況を詳細に踏まえていたことが確認された。今回の調査で『なめとこ山の熊』では、宮沢賢治は現実のマタギの状況を詳細に描いていたことが明らかとなった。『なめとこ山の熊』の舞台は、長らく架空の山だと考えられていたが、後年実在することがわかった。童話の主人公は〈熊捕名人〉と作中で呼ばれているが、東北の山村などの山奥で独自の集落での生活を営んだ実在のマタギの姿が反映されており、なかでも主人公のモデルとして「旅マタギ」を描いたことが確認された。「旅マタギ」は旅先で定着し暮らしを立てた。それは、出稼ぎ狩猟であり、旅先で休息をとったり食料を調達したりしたマタギ宿、そして捕獲した獲物を市場で換金交換することで成立する。そのため当時の「市場」との関係性が深く絡んでいた。インタビューや調査を通して、宮沢賢治の戦時期の受容には、現在よりも、童話に描かれた様々な要素が、当時の読者にとって身近であったことが確認されたが、これは大きな収穫であった。今後、この観点から調査をすすめることによって、戦時期の宮沢賢治の受容についての研究の進展が期待できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
海外渡航費や宿泊費の高騰、研究協力者の職場環境の変化等で予定していた国外での資料調査の機会を充分に得ることが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、シンガポール等の国外における戦時期の日本の児童文学の受容状況について、研究協力者の協力を得ながら調査をすすめる。国外における戦時期の児童文学の受容についての調査が困難な場合は、国内での資料調査を中心に、戦時期の児童文学の受容研究をすすめる。
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Causes of Carryover |
海外渡航費と宿泊代の高騰、国外の研究協力者の職場環境の変化等の理由で予定していた国外での資料調査等を充分に行うことが困難であった。次年度は、国外のアジア図書館、シンガポールなどの国外での資料調査を研究協力者の協力を得ながらすすめる予定である。
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