2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K00298
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
小林 ふみ子 法政大学, 文学部, 教授 (00386335)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 国学 / 土佐日記 / 本朝孝子伝 / 古言梯 / 後奈良院御撰何曾 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度もすでに入手してきた資料に基づいて分析を進めた。とりわけ和書を出典とする揃い物において当時の国学との距離感にばらつきがあることが見えてきた。 四方側による揃物である柳々居辰斎画「永正年間何曾合」(九つ切判、文化末頃、総数未詳)は、写本で伝来し、『群書類従』第28集巻504に収められた『後奈良院御撰何曾』(永正十三年奥書)を出典とすることがわかった。『群書類従』同巻の刊行との先後はあきらかにできていないが、当時の古典学的関心の先端を取り入れたものと考えられる。他方で松風台停々・久堅屋・文々舎蟹子丸の名を冠した「土佐日記」(色紙判、文化末頃、全14図か)は、加藤宇万伎『土佐日記註』(写)が広まり、数年後にあたる岸本由豆流『土佐日記考証』(文政2・1819年刊)が出されるなど国学者等によって本文校訂が進められていたなか、この揃物の掲げる本文は最新の考証によるものではない(延宝版『土佐日記首書』本文が近いか)。また本町連の名を冠した岳亭定岡画『本朝廿四孝』(色紙判、文政頃、全24図)は出典として六国史や多数の軍記、版本による普及が知られない『古事談』も含め説話集類を掲げるが、実質的に藤井懶斎『本朝孝子伝』3巻3冊(天和4・1684年刊)を出典としていることが判明した。 狂歌摺物の主題は古典文学にとどまらず、四方側判者森羅亭門人等による魚屋北渓画「古言梯十八番続」(色紙判、天保2・1831年、全18図)が、楫取魚彦『古言梯』(明和5・1768年刊)やそれを承けた村田春海・清水浜臣『古言梯再校増補標注』(文政4・1821年刊)に取材するように、狂歌壇の国学研究への関心は顕示されてきた。が、実際どれほど当時最新の研究状況を反映しているかは幅があると考えられ、さらに追求していく。レスコビッチ・コレクションの摺物については図録化の計画が立ち上がり、本研究の成果を活かす場として予定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
個別の作品、とりわけ揃い物の主題の分析は進めているが、色紙判摺物を中心とする新規の作品調査ができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
海外調査が実施可能か状況を見きわめつつ実施の可能性をさぐるとともに、国内の美術館における調査を行っていく。また国内・海外の研究協力者と公開の研究会を企画したい。
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Causes of Carryover |
海外を含む、遠隔地調査ができなかったこと、海外の協力者を招いた研究会開催の見通しが立たなかったことが大きい。 今後の使用計画としては、(1)国内の遠隔地の機関で調査を行うための旅費とすること、(2)協力者への謝金も含め研究会開催に向けた準備を具体化すること、が挙げられる。
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