2023 Fiscal Year Research-status Report
東アジア漢字文化圏における龍宮訪問譚の文化・思想交流史的研究
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20K00299
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
金 孝珍 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20638986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 淳司 明治大学, 文学部, 専任教授 (10453961)
袴田 光康 日本大学, 文理学部, 教授 (90552729)
堂野前 彰子 (岡本彰子) 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (50588770)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 龍宮 / 水府 / 龍宮訪問譚 / 志怪 / 伝奇 / 東アジア / 漢字文化圏 / 比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は韓国における龍宮訪問譚を調査し分析を行った。特に日韓に共通する話素をもち、「猿の生肝」譚として知られている『兎公伝』を中心として調査を行った。『兎公伝』はインドの本生譚が漢訳経典を経て朝鮮に入り、十八世紀以後小説化されたものである。この話は朝鮮時代後期に大流行し、漢文・ハングルと漢文の混用・パンソリ系など、その異本も非常に多い。漢文本は六種類あるが、そのうちの国立中央図書館本を用いて、書き下し文と注釈、現代語訳をつけた注釈書を完成した。現在、出版に向けて準備中である。 また『三国遺事』には、龍宮訪問譚に関する「水路夫人」、「宝壌梨木」と「明郎神印」の話が見え、また龍神と結び付いた護国仏教の説話も多く見られる。『三国遺事』に見られる龍宮訪問譚は仏教とも密接に関わっている。特に、『三国遺事』巻第三興法は広く東アジアにおける仏教の伝来とその受容を考える上でも貴重な資料でもある。『三国遺事研究会』の仲間と『三国遺事』巻第三興法の注釈作業を行っており、「『三國遺事』巻第三興法「順道肇麗」―校勘と注釈―」(『研究紀要』(日本大学文理学部人文科学研究所)107号、2024年2月)を共同執筆(袴田光康、金孝珍、堂野前彰子、太田陽介)した。 年度末には韓国の慶州でフィールド調査を行った。黄龍が現われたという伝承を持つ皇龍寺や王の化身である龍が往来するという感恩寺の遺跡を見学し、その立地や地理的環境を確認することができた。調査を通じて慶州の町が北は小金剛山、東は吐含山、南は南山、西は仙桃山に囲まれ、東側以外には大きな川が流れ天然の濠となっていていることがわかった。まさに龍神ならぬ河川によって王都は守られていたのである。また、西は大鐘川沿いに、北は兄山江沿いに東海へと到るルート上に仏教寺院が配されており、それら寺院が襲来から都を守る要害でもあったことがわかったことは大きな収穫であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、2020年度は中国の洞庭湖、西湖のフィールド調査をし、六朝唐代の志怪伝奇小説の中から龍宮訪問譚の調査・分析、2021年度は韓国のフィールド調査を行い、韓国における龍宮訪問譚の分析、2022年度は日本のフィールド調査し日本における龍宮訪問譚を分析しまとめる予定であった。しかし、新型コロナの影響でフィールド調査が遂行できず全体的に遅れてしまい、研究期間を延長した。2023年度は韓国慶州のフィールド調査ができ、韓国における龍宮訪問譚の分析ができた。2024年度には日中韓の龍宮訪問譚について取りまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究は当初2022年で研究をまとめる予定であったが、新型コロナウイルス感染症のため海外のフィールド調査がまったく行えなかった。そのため1年延長し、韓国へのフィールド調査は行うことができたが、日本のフィールド調査を遂行することができず、さらにもう1年延期することになった。2024度は日本のフィールド調査を行い、文献資料の調査・分析、およびフィールド調査の結果を踏まえて、本研究課題を全体的にまとめていく方針である。
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Causes of Carryover |
2023年度は韓国と日本のフィールド調査を行う予定であった。しかし、韓国のフィールド調査はできたが、日本のフィールド調査は行うことができなかった。そのため年度内での予算執行が遅れ、次年度使用金額が生じることになった。2024年度は日本の調査に費用に当て、フィールド調査を行い、研究成果をまとめる予定である。
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