2020 Fiscal Year Research-status Report
肉筆および活字資料の包括データベースに基づく近代日本の「日記文化」の発展的研究
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20K00300
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 祐介 明治学院大学, 教養教育センター, 講師 (40723135)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日記 / 自己表象 / 自己語り / 書記文化 / 読書文化 / リテラシー / 戦争経験の継承 / アーカイブズ |
Outline of Annual Research Achievements |
助成初年度にあたる2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により、大幅な研究計画の変更を余儀なくされた。 当プロジェクトの活動の中心となる研究会「近代日本の日記文化と自己表象」は、感染鈍化を期待して一度は延期措置を取ったが、その後も状況が好転しなかった。急速に研究教育活動のオンライン化が進展するなか、当研究会も当面のオンラインへの移行を決定し、第24回研究会を2020年7月11日(土)に開催した(Zoom利用)。結果的に、多くの研究会で聞かれたように、遠方の研究者の参加数も多く、従来(平均25名程度)より多い34名がオンラインで参集する機会となった。その後もオンラインで研究会を定期的に設け、第25回を8月22日、第26回を12月12日、第27回を2021年3月6日に開催することができた。 研究会活動と並行して、2014年度より継続する日記文化の研究プロジェクトとしては第二弾となる論文集の制作を進めた。これは田中祐介編『日記文化から近代日本を問う』 (笠間書院、2017年)の続編となるもので、2019年9月28日、29日に開催した学際シンポジウム「近代日本を生きた『人々』の日記に向き合い、未来へ継承する」の成果に基づく。新型コロナ禍により原稿集約には困難が伴ったが、寄稿者とオンラインでの協議を重ねながら、2021年度秋の出版を目指して作業を進めている。 2020年1月に約850件のデータをウェブ公開した「データベース 近代日本の日記」(β版、https://diaryculture.com/database/)は、当初計画では今年度からデータ化をさらに促進し、拡充する予定であったが、移動制限や作業上の安全確保の問題により、オンラインで調査可能な関連情報の蒐集に集中した。若手研究者の協力を得て、活字および手書きの日記資料の包括するデータベースの実現に向け、準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」でも触れたとおり、新型コロナウイルスの感染拡大により、大幅な研究計画の変更を余儀なくされた。 当プロジェクトの活動の中心となる研究会「近代日本の日記文化と自己表象」は、感染鈍化を期待して一度は延期措置を取ったが、その後も状況が好転しなかった。急速に研究教育活動のオンライン化が進展するなか、当研究会も当面のオンラインへの移行を決定し、第24回研究会を2020年7月11日(土)に開催した(Zoom利用)。年度前半の研究会活動が停止した穴埋めを、なんとか夏以降のオンライン化により果たそうとした形となった。 一方で、研究活動の深化には不可欠である実地調査や、研究協力者を招聘しての共同調査は全く実現できなかった。すでに手元にある資料に基づきさしあたりの研究活動を進めることはできても、次年度以降の更なる発展に繋がる基礎的調査ができなかったのは大変悔やまれる。今回の助成事業では国際的連携も一つの目標と定めたが、新型コロナ禍による移動の制約に加え、研究会のオンライン運営と出版物の準備でほぼ手一杯となり、全く着手できなかった。 2019年1月に、約850件のデータをウェブ公開した「データベース 近代日本の日記」(β版、https://diaryculture.com/database/)は、当初計画では目録化の促進により拡充する予定であったが、移動制限や作業上の安全確保の問題により、オンラインで調査可能な関連情報の蒐集に努めることとした。結果的に、目録作業が未着手の日記資料は、今年度は全く手付かずに終わった。 第二弾となる論文集は、当初2020年冬の出版を計画していた。しかし、執筆者全体にあてはまることであるが、新型コロナ禍での業務急増や心身への負担増により、原稿集約には困難が伴い、出版時期を2021年度に延ばさざるを得ない状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究会活動は今年度のオンライン化を踏まえ、新型コロナウイルスの感染状況が好転しても、より参加が容易になるようハイブリッド形式で開催する計画である。幸い今年度も様々な分野からの研究者を新たに迎え、本事業が重視する学際性を強化することができた。今後はこうした環境を最大限に活かし研究を深化させながら、引き続き事業全体を推進する母体として機能させたい。 まだまだ見通しの立たない状況であるが、状況好転時に速やかに行動に映ることができるよう、東アジアの関係機関とコンタクトを取り、オンライン協議等を有効活用しながら、連携に向けた下準備を進めたい。具体的には、まずは関係機関との情報共有をはかった上で、オンライン研究会の開催による交流を通じて、更なる協働の可能性を模索したい。それにより、本事業が謳う国際的連携を果たすための基礎的な環境を構築したい。 「データベース 近代日本の日記」(β版)のデータ増強作業も再開したい。まずは出版された日記資料のうち、明治から昭和戦前期までに綴られた日記のデータ化を、三密を回避した作業環境を整えた上で進めたい。その上で、明治以降に綴られた手書きの日記群からなる「近代日本の日記帳」目録のデータベースへの統合準備をしたい。 以上の推進策をとりつつ、現在制作する論文集の刊行後は、派生的な複数の出版物の刊行を目指し、着手したい。それにより本事業の成果の多方面への発信を目指したい。 なお、2020年度が事業推進には困難な状況であったことを踏まえ、当初3年計画であったところ、1年延長して十分な成果を挙げることも視野に入れている状況である。
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Causes of Carryover |
残額が生じたのは、研究会開催や調査活動に必要な旅費が一切生じなかったという一言に尽きる。今後もオンライン併用により旅費が生じないケースはあるが、新型コロナの感染状況が落ち着いた際には、ぜひ今年度の分まで、調査活動を推進するために予算を使用してゆきたい。
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Research Products
(2 results)