2020 Fiscal Year Research-status Report
語り物文芸論の再構築に向けた資料学的対照研究―〈地方諸藩〉の書物環境を視座にして
Project/Area Number |
20K00305
|
Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
宮腰 直人 同志社女子大学, 表象文化学部, 准教授 (50759157)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 彰 立教大学, 文学部, 教授 (40287941)
南郷 晃子 (中島晃子) 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (40709812)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 幸若舞曲 / 語り物文芸 / 書物環境 / 地域と文芸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、幸若舞曲を中心に諸家諸藩における語り物文芸の受容と展開の様相を明らかにし、旧来の作品論やジャンル論を越えた新たな語り物文芸論を構築し、広く発信することを目的とする。 具体的には加賀金沢・前田家、米沢・上杉家、薩摩・島津家と幸若舞曲の関係に注目し、領主や藩士の蔵書、著述や編纂物等の地域社会の書物とその環境に注目し、研究を推進する。また、舞曲のテクストや絵画表象はもとより、領主や藩士の夜話集や逸話集等の地域で生成した言説にも着目することで、語り物文芸の文化的影響力を多面的に明らかにする。 当初の計画では、2020年度は石川県立図書館や金沢市玉川図書館近世史料館など金沢の資料調査を中心に研究を進める予定であったが、新型コロナウィルスの流行により、調査は延期を余儀なくされた。研究分担者との相談のうえ、金沢・前田家の資料については、金沢の郷土史を担った森田良見の著作等を中心に、すでに刊行された郷土資料の収集を進め、本格的な調査のための予備的な分析を行った。公刊された資料であっても、従来の研究からは見過ごされている重要な情報は少なくなく、本研究を効率的に進める上での指針も得られ、有意義な取り組みとなった。また、計画では2021年度の中心的課題であった米沢の幸若舞曲資料の分析を前倒しにして研究を推進した。こちらについては資料収集ならびに分析を研究代表者が持続的に検討を重ねていたこともあり、その成果の一部を、2021年6月刊行予定の『同志社女子大学日本語日本文学』33号にて発表する予定である。コロナ禍で研究の推進が厳しい状況だが、積極的に工夫を重ね、本研究を実りあるものにしたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画をしていた、研究分担者を交えた資料調査が、コロナ禍によって延期を余儀なくされ、本研究の柱の一つであった地域資料への取り組みが先延ばしになったたため。ただし、調査対象の範囲の変更や、次年度の研究テーマの前倒しなどの措置によって、新たな角度から当初の研究課題を練り直すことができたのは成果といってよいだろう。以上の点から全体的な計画としてはやや遅れていると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの流行と拡大によって、各地域での調査予定をたてることが困難になった。今後の研究の推進方策としては、以下の3点である。(1)研究分担者と、従来のメールによる相談に加え、Web会議システムを活用し、今後の計画の方向性について議論を重ねる機会を増やす。(2)本年度の取り組みから、すでに公刊された郷土資料にも重要なテクストが見いだせたため、コロナ禍が長期化するようであれば、そうした資料の分析や注解によって、本研究を推進する。(3)また、石川県立図書館のデジタル図書館や市立米沢図書館のデジタルライブラリー等も積極的に活用し、多角的に研究を進める。全体の計画については、本年のごとく、前倒し等の柔軟な対応も必要になってくるだろう。研究分担者との連携を緊密にとりながら、研究活動の円滑な実施につとめたい。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの流行によって、各地域資料の調査の実施が困難になったため、おもに旅費分が次年度使用になった。コロナ禍の状況がかわり次第、すみやかに金沢市玉川図書館等、2020年度に予定していた資料調査を2021年度分とあわせて調査し、使用する予定である。また、コロナ禍が長期化するようであれば、関連資料の購入などにあて、研究推進の一助とする。
|
Research Products
(1 results)