2021 Fiscal Year Research-status Report
松山市立子規記念博物館星加文庫の総合的調査ー近世伊予俳諧の諸相を見直すー
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20K00307
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Research Institution | Matsuyama Shinonome College |
Principal Investigator |
松井 忍 松山東雲女子大学, 人文科学部, 名誉教授 (70352094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩崎 俊彦 高知大学, 教育研究部総合科学系地域協働教育学部門, 教授 (20319916)
小林 孔 大阪城南女子短期大学, その他部局等, 講師(移行) (60280038)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 地域の文化資源 / 日常的な俳諧の楽しみ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、子規記念博物館での実物資料調査を1度実施し、全員が星加文庫資料全体を概観し、目録作成に必要な項目・表記・内容などの方針を確定した。資料の翻字作業は、7割がた終えている。 星加文庫資料は、江戸中期の木村家に関わるものと幕末期の久門家に関わる俳諧資料の大きく二つに分けることができる。伊予西条で町方大年寄を務めた近江屋木村重蔵信貞は、宝暦期淡々流の俳人牧雨として西条社中を牽引した人物である。その子又蔵安貞も可菊として木村家俳諧を継承するが、30才で早世した後は姉婿の丹次重孝(湖梅)が牧雨・可菊の追善の催しを主催する。星加文庫の木村家資料の多くは、湖梅主催の追善に寄せられたものと考えられ、木村家と当時の俳人との交友関係を知る手がかりになる資料であることが分かる。また、久門家は西条藩中野村の庄屋であり、その交友関係の広がりについても確認する必要がある。 そのため、それぞれの時期に伊予の俳人の句がどのようにとられているか、彼らの俳諧活動がどの範囲に及んでいるかを探るために天理図書館綿屋文庫の俳書の悉皆調査を続けている。明和・安永期の俳書については、安永中期まで悉皆調査を終えている。 これまでの調査では、相当数の伊予俳人の句が様々な俳書にとられ、その活動拠点も伊予全体に及んでいることが分かる。また、『伊予俳人 栗田樗堂全集』にも未掲載の栗田樗堂のごく初期の句が発見でき、ごく若い頃から俳諧に親しんでいたことが明確にできた。地方俳諧の豊かな実りに触れることができたのは、大きな成果と言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大により、子規記念博物館での実物資料の調査がこの2年間で1回しかできず、撮影した写真による翻字作業や天理図書館綿屋文庫の俳書調査、文献調査などを進めるのみに終始していたため、進捗状況はかなり遅れている。本研究の目的である星加文庫目録の作成については、実物資料調査の際に全員による協議を行い方針の確定をみたので、実施調査が可能になれば研究の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は子規記念博物館での実物資料調査の回数を大幅に増やす予定で、星加文庫目録のデータ入力がほぼ終了できる程度まで進めていきたいと考えている。また、星加文庫資料の翻字はかなり進んでいるため、今年度中に中間報告として全資料の翻字を小冊子にまとめる予定である。 研究の成果については、資料調査と並行して順次進めていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため、子規記念博物館での実物資料の調査が、予定の年間3回の内1回しかできず、旅費の支出が予算額を大幅に下回った。令和4年度は、調査回数を5~6回に増やすこととし、遅れている研究の進展を図る予定である。あわせて資料の翻字を年度内に終了し、小冊子としてまとめて公表することとした。これによって、松山市教育委員会への中間報告とし、今後の研究への引き続きの協力を得、松山市民への情報提供にも活用してもらうつもりである。
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