2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of Middle-Early Modern Arts and Sciences in Tsuruya Nanboku Kabuki
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20K00309
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
山下 則子 国文学研究資料館, その他部局等, 名誉教授 (40311162)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 中国小説から取材した歌舞伎 / 歌舞伎の「悪婆」の演技造型 / 出版物から取材した歌舞伎 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も新型コロナウィルス流行のため、調査や成果発表のために国内外に出張することは難しかったが、郵送やリモート利用等の代行手段によってある程度は行えた。 ZOOMによるリモート研究発表で、関西の演劇研究会(2021年5月29日)にて、当科研費による研究成果発表を「騙る女―歌舞伎『お染久松色読販』と『今古奇観』―」と題して行った。内容は、江戸時代後期歌舞伎にみられる「騙りをする悪婆」という役柄の創作に、中国の白話小説に詳しい江戸時代中期の開明的な知識人たち(平賀源内・森島中良)と、南北をはじめとする歌舞伎関係者との繋がりが影響している可能性について論じたものである。発表は大きな反響があり、多くの研究者から意見を頂いた。そこで得た知見を基にさらなる調査を重ね、関東に基盤を持つ歌舞伎学会(2021年12月11日)にて「騙りをする悪婆―歌舞伎『お染久松色読販』と『今古奇観』―」と題して学会発表を行い、好評であった。 また、国文学研究資料館ないじぇる芸術共創ラボの企画でYouTube「鉢中の天」を作成し、英語や中国語でも公開しているが、その中での研究発表「東海道五十三次・土地のイコン」は、将来的に当研究に結びつくものである。 また昨年度リモート形式で開催された、ヴェネチア大学カ・フォスカリ主催の国際集会"Images From the Past Intertextuality in Japanese Premodern Literature"(2021年2月3日~5日)での研究発表"Evil of the Lower Middle classes:What Tsuruya Nanboku's Kabuki Learned from Japanese Classics and Chinese Texts"の英文論文を作成、投稿し、査読審査に合格した。公開はこれからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も新型コロナウィルスの変型流行のため、調査や成果発表のための出張は難しく様々な面で不便を強いられた。長期に亘り調査を受け付けない機関には、個別に事情説明の上、資料の複写物を郵送して頂いた。 当科研による研究成果の発表は、多くの学者が集まる研究会と、一般人も含めた社会に開かれた学会で、100人の聴衆を対象に行った。どちらもZOOMによるリモートで発表し、反応は大変好評であった。現在はそれを論文化し、いずれ本にまとめて出版予定である。 また、「東海道五十三次・土地のイコン」と題して、国文研のYouTubeで発信しているが、これは古典や古典芸能が、現代アートの素材となりえないか、という発想の「ないじぇる芸術共創ラボ」という社会連携の取り組みの一つである。このYouTubeのダイジェスト版は英語訳や中国語訳を付したバージョンも公開しており、国内のみならず国外からも注目されている。このYouTubeで話したテーマ「東海道五十三次・土地のイコン」は、いずれ当科研のテーマにも繋がる内容を含んでいる。 また、まだ公開されてはいないが、2021年2月にヴェネチア大学カ・フォスカリが主催したリモートによる国際集会"Images from the Past Intertextuality in Japanese Premodern Literature"での当科研の成果発表を英文論文化し、査読審査を合格したので近く出版物に掲載されることが決定した。電子でも公開される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は全5か年の研究機関の2年目である。まだ焦る段階ではないと思うが、新型コロナウィルス変異株流行のために、研究の推進がなかなか思うように進まず、困惑している。 当科研の目的に沿った研究は、すでに3つのテーマのものが完成に近い段階まで進められている。コロナ流行下での新資料収集は、調査不能な所蔵機関に事情を説明して郵送等配慮して頂いたが、今後の研究に新しい展望を開く段階には至りにくいのが実態である。 研究成果の学会発表自体は、Zoomなどによるリモート形式で、特に問題はなく行え、意見収集は可能であるが、研究者同士の実際のコミュニケーションが制限される中、研究を進捗させるのは様々な面から難しい。未着手の3つのテーマに沿って研究の新局面を開きたいので、可能な限り調査研究を進めて発表した成果を学会誌等に発表し、コロナ流行が収まった時に、再度その学会誌に掲載した成果をブラッシュアップさせ、最終的な出版物としての成果にそれを反映させて結実させたい。
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Causes of Carryover |
本年度も新型コロナウィルスの変型が流行したため、調査や成果発表のために、国内国外への旅費を使用しなかった。学会などがリモートで開催されたためである。そのため次年度使用額が生じたが、コロナウィルス流行が収まれば、積極的に成果発表などで出張する予定である。
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Research Products
(6 results)