2022 Fiscal Year Research-status Report
Study of Middle-Early Modern Arts and Sciences in Tsuruya Nanboku Kabuki
Project/Area Number |
20K00309
|
Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
山下 則子 国文学研究資料館, その他部局等, 名誉教授 (40311162)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 近世演劇 / 近世歌舞伎 / 歌舞伎の素材 / 出版物と歌舞伎 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は全5か年の研究期間の内の3年目にあたり、ようやく研究成果の発表も軌道に乗り出したといえる。2022年9月に、昨年度ヴェネチア大学カ・フォスカリにてオンライン実施された国際学会「Images from the Past:Intertextuality in Japanese Premodern Literature」(過去からのイメージ:日本前近代文学における間テクスト性)での研究発表「Evil Women of the Lower Classes- A study of Tsuruya Nanboku's Use of Chinese Novels in the Kabuki Play Osome Hisamatsu ukina no yomiuri-」が英文論文としてデジタル公開された。これはある鶴屋南北作歌舞伎が中国白話小説を原拠とする話を利用しており、近世中期から活躍する知識人との交流によって南北が歌舞伎化したという内容である。 2022年11月5日に、同志社大学にて開催された日本近世文学会秋季大会シンポジウム「越境する・交流する―近世演劇を起点として―」に登壇し、研究発表「南北作歌舞伎の素材とその影響―『独道中五十三駅』を中心に―」について報告した。これは鶴屋南北作歌舞伎が、近世中期に刊行された名所図会から取材をしていたことを明確にしたものである。 2022年12月3日にオンライン開催された歌舞伎学会秋季大会での研究発表「近世中期隅田川物歌舞伎における清玄・双面の融合」を行った。これは鶴屋南北が清玄・桜姫物と双面物歌舞伎をどのように利用していたかを編年形式で明らかにしたものである。 これらの成果により、鶴屋南北作歌舞伎が、どのように近世中期の学芸・出版物から影響を受けているのかを明確にすることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鶴屋南北作歌舞伎が近世中期学芸を素材とすることを解明する研究は、予定の半分以上が完成した。南北の作品創造の背景にある、近世中期の知識人との交流や、取材した出版物などを明らかにすることができた。またこれらの研究成果を、学会等で画像を多用したPPにして発表し、専門外の聴衆にも興味をもって聞いてもらうことができた。 2022年度に出した成果の詳細は、中国小説からの取材と、その背景にある近世中期の知識人たちとの交流、それにより「悪婆」という歌舞伎の役割を示す用語の典拠も推測することができた。 また、近世後期歌舞伎である南北作歌舞伎では、近世演劇に伝統的な清玄・桜姫物と双面物を取り入れつつ、斬新な工夫を試みている。その作品の新しさについて考察する素地ができた。また、作劇の中に、名所図会からの取材などが新たに発見された。これらについて、それぞれ学会発表を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は全5か年の研究期間の3年目である。本研究の全体像から判断すると、その半分は全て研究会・学会発表を経てまとめられており、ほぼ完成状態と言える。本研究の未完成部分は、既に学会発表をしているが論文化は未完のもの、シンポジウムでの簡単な発表しかしていないもの、過去に研究成果をまとめたが、更に完成度を高めたいもの等がある。近代文学に影響を与えた鶴屋南北作歌舞伎などは、過去に短文にまとめた程度しかできていない。これらをあと2年間で完成させるのは、少し無理があると言わざるを得ない。2020年~2022年までの3年間は、新型コロナウィルスの流行のために、調査や成果発表が進まず、研究の進展にかなり支障をきたした。できれば、これらの未完の部分も全て、学会発表等の機会を持ちたい。最終年度より1年の研究期間延長などの措置が講じられると大変ありがたい。
|
Causes of Carryover |
今年度も新型コロナウィルス流行の影響で、学会や研究会はリモートを利用した形式が多かった。また同様の理由で、海外での国際集会への参加は、まだ実現するのにためらいがあった。 加えて研究資料として最適な古典籍が、市場に出回らなかった。次年度は海外での国際集会発表なども可能になるかもしれない。また使用しているPCの状態がかなり古くなりつつあり、最終的に成果発表を出版の形にまで持っていきたいので、最適なPCを備えたくも思っている。
|
Remarks |
(2)は、パスワード「ekkyo2022」が必要である。
|
Research Products
(5 results)