2020 Fiscal Year Research-status Report
神奈川近代文学館所蔵久生十蘭特別資料に関する文献学的研究
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20K00313
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
須田 千里 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (60216471)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 新西遊記 / 白雪姫 / チンダル『アルプスの氷河』 / 仏領西アフリカ横断記 / アジア探険五十年 / 蒙古草原の喇嘛廟と喇嘛踊り / 療法は百方尽せり されど王は死せり / 『大百科事典』 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型コロナウィルス蔓延により、神奈川近代文学館における実地調査は、11月の一度のみに留まった。しかし、館側のご協力により、6日間、朝から夕刻まで調査できたため、自筆原稿・草稿・手入切抜・写真類など一点物の貴重な資料を確認し、必要な物はデジタルカメラに収めることが出来た(のちにプリントアウト)。また、切抜(久生十蘭執筆作品や久生十蘭が収集した資料類)もそのほとんどを確認し、必要に応じてコピーした。 原稿・草稿・手入切抜・創作メモ類はまだ2割弱しか確認できていないが、書簡・絵葉書はほぼすべてを確認できた。肖像写真は大量にあるが、これも3割くらいは確認できた。 研究実績としては、「新西遊記」その他の別稿(草稿)の確認が出来たこと、「新西遊記」の依拠資料がいくつか判明したことが挙げられる。例えば、ローラ・シー・ブールトン「仏領西アフリカ横断記」には、アフリカのトンブクツーがかつて学問の都で、貴重な写本が図書館に収められたとの記述があり、「新西遊記」の記述と一致する。また、高山洋右「アジア探険五十年」、吉田謙吉「蒙古草原の喇嘛廟と喇嘛踊り」、ハワード W.ハガード「療法は百方尽せり されど王は死せり」などが、「新西遊記」に具体的にどのように用いられたかが判明した。いずれ、かつて発表した「新西遊記」論に追記したい。 また、久生十蘭作品の分析も進め、「「白雪姫」の材源と語り――久生十蘭論VIII――」を発表した。主たる材源としてチンダル『アルプスの氷河』、平凡社『大百科事典』、MUIRHEADのTHE FRENCH ALPSなどを指摘するとともに、三人称小説に見える本作が、じっさいは一人称小説である事を明らかにした。また、「「坊っちやん」と『夢酔独言』、スティーブンソン、久生十蘭「湖畔」」では、代表作「湖畔」への漱石「坊っちやん」からの影響を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
久生十蘭保存の切抜をほとんど確認し、必要な物はコピーできたこと、それにより「新西遊記」の典拠を複数確認できたこと、草稿・原稿類も2割弱確認し、デジタルカメラで撮影できたこと、書簡や絵葉書なども数多く確認でき、撮影できたことなどが理由である。 同時に、「白雪姫」論を発表できた点も順調な進展といえる。 なお、草稿・自筆原稿類の撮影には経費がかさむため、初年度は控えめだったが、2021年度は資金的にやや余裕があるため、積極的に行う予定である。 また、今後の研究のため、『金狼』『魔都』『平賀源内捕物帖』『顎十郎捕物帖』などの図書や久生十蘭作品掲載の雑誌も購入できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度もコロナ禍が継続しているため、思うような調査が進まない可能性があるが、草稿・自筆原稿類はデジタルカメラでの撮影を予定しており、時間は余り掛からないと考えられる。そのため、当初の予定通り、数回の出張で撮影を終え、また未確認の資料の確認を行う予定である。 同時に、久生十蘭作品研究として「黄泉から」「生霊」に関する論文を執筆し、発表したい。 また、撮影・複写した資料の読み込みと分析、資料や書簡の翻刻にも着手する予定である。 引き続き、久生十蘭関係の図書や雑誌も購入する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による緊急事態宣言等により、神奈川近代文学館への出張が年間一回に留まった結果、当初計画していた旅費(18万円)を使えなかったことが、最大の理由である。 2021年度は、当初の計画通り年数回の出張を行うとともに、自筆資料などの撮影により資料複写費がかさむと予想され、次年度使用額を含めて予定金額を使用できると考えている。
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Research Products
(2 results)