2021 Fiscal Year Research-status Report
墓の顕示機能の分析と墓誌の表現分析を基盤とした日中韓三カ国の文化交流の融合的研究
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20K00330
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
廣川 晶輝 甲南大学, 文学部, 教授 (40312326)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 万葉集 / 墓 / 古墳 / 墓誌 / 輓章 / 日中韓文化交流 / 山上憶良 / 沈痾自哀文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、墓が持つ顕示機能の分析と墓誌の表現分析を基盤とし、従来指摘されていない日・中・韓三カ国の古代の文化交流の様相を解明し東アジア文化交流の理解に貢献することを最大の目的としている。そして、文学・文化・考古学の融合的研究を確実に推進することで上記目的を達成すべく尽力している。 交付申請書の「研究目的」欄に明示したように、本研究課題は「墓が持つ機能・機制」の理解を核心に据えている。その理解のためには、幹線道の近くに築造されている墓・古墳の臨地調査研究が重要である。なぜならば、幹線道の近くに築造された墓・古墳は、第三者に対しての顕示・アピールの機能、および、墓に眠る死者への「偲び」の回路を開き得る機制が極めて明瞭に示される築造物であるからである。研究代表者廣川晶輝は、群馬県安中市教育委員会教育部文化財保護課埋蔵文化財係係長(文化財保護主事)井上慎也氏の御協力のもと、幹線道「古代東山道」の要衝の地における「古墳の機能・機制」究明のための臨地調査研究を2019年10月に実施した。その際、井上氏から、〈牧〉〈道路〉〈集落〉それぞれを個別に把握するのではなく一体として把握することの重要性についての知見に基づく御教示を得ていた。 当該年度に実施した研究成果の意義としては、上記臨地調査研究の成果を精査し、「『万葉集』巻1・一番歌の「家告閑」について」(『甲南大學紀要 文学編 THE JOURNAL OF KONAN UNIVERSITY Faculty of Letters』172号、2022年3月)としてまとめ得たことが挙げられる。井上氏からは上記論文執筆時にも研究分野を超えた学際的な御教示を得た。〈牧・道路・集落〉を一体として把握する知見と教示に導かれて上記論考では、〈牧〉〈古東山道〉〈集落のモニュメントとしての古墳〉を一体として把握する方法を析出することができた次第である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染防止対策として臨地調査研究出張の自粛が強く求められた当該年度の閉塞した状況にあっても、研究調書に具体的方法として明示した『万葉集』歌人山上憶良の一大漢文作品「沈痾自哀文」(『万葉集』巻5)の表現研究を推進できた意義は大きい。推進にあたってはZoomを活用した研究会を実施し研究者同士の連携をはかることもできた。 群馬県安中市教育委員会教育部文化財保護課埋蔵文化財係係長(文化財保護主事)井上慎也氏からは、専門研究分野を超えた学際的な御教示を得ることができた。古代幹線道「東山道」のすぐ近くには「簗瀬二子塚古墳」(群馬県安中市。2018年10月15日「史跡名勝天然記念物」指定。参照、文化庁「国指定文化財等データベース」「史跡名勝天然記念物」「簗瀬二子塚古墳」の「詳細解説」)が築造されている。その「簗瀬二子塚古墳」と形状の酷似する古墳として「後閑3号墳」(同市下後閑)、「下増田上田中1号墳」(同市松井田町下増田)がある。この二つの古墳は「東山道」の前身である「古東山道」との関連を重層的に考察するうえで重要な古墳である。研究代表者廣川晶輝は、〈牧〉〈道路〉〈集落〉を一体として把握するという井上氏の御教示を取り入れ、上記「『万葉集』巻1・一番歌の「家告閑」について」(2022年3月)を著した。この論考においては、馬を閉じ置く馬小屋や牧などの施設の柵を「せ」と呼ぶ例を、二つの古墳の近くの安中市(旧碓氷郡)の地名「木馬瀬(ちませ)」の中に見出すことができた。この成果は、『万葉集』巻1・一番歌の第七句「家告閑」の「閑」を「せ」と訓む訓詁の証拠を得ることに貢献するばかりでなく、歴史学・考古学の知見と『万葉集』の訓詁とをつなぐ融合的研究の実践例を示し得たわけである。つまり、〈牧〉〈古東山道〉〈集落のモニュメントとしての古墳〉を一体として把握する学際的成果となったのである。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染防止対応は今後も予想されるが、この状況においても研究の歩みを止めることがないように今後もオンラインミーティングツールZoomを活用して『万葉集』の本文校訂作業の研究会を定期的に開催する。現にこの様式を執筆している現在(5月9日)においても、2022年6月4日にZoomを活用しての『万葉集』の本文校訂作業の研究会の予定をすでに組んでいる。その研究会において研究代表者廣川晶輝は、『万葉集』歌人山上憶良の『万葉集』巻5収載作品の本文校訂作業を遂行する。 新型コロナウイルス流行が収束し臨地調査研究出張が可能となった暁には、すでに研究協力を得ている群馬県安中市教育委員会教育部文化財保護課埋蔵文化財係係長(文化財保護主事)井上慎也氏の御協力のもと、古代幹線道「東山道」およびその前身である「古東山道」の要衝の地における「古墳の機能・機制」究明を目指す。その究明のために「後閑3号墳」「下増田上田中1号墳」の臨地調査研究をさらに推進する。二つの古墳の「T字形石室」の形状が横穴式石室が幹線道を通って中央から伝播した証である知見をすでに得ており、その知見をもとに同地域の古代東山道に面す「簗瀬二子塚古墳」の副葬品と韓国祭祀遺跡との関連の研究も推進する。この研究は韓国中央大学校教授具廷鎬氏の御協力のもと韓国訪問が叶った際の研究の基盤となる。また、すでに研究協力を得ている奈良県生駒郡平群町教育委員会葛本隆将氏の御協力のもと、「穹窿状」石室を持つ同町「宮山塚古墳」の臨地調査研究を実施したい。同古墳は大韓民国忠清南道の「宋山里古墳群」の5号墳の形状と酷似する。この古墳の臨地調査研究をとおして、「韓国-日本」の文化交流の考究の成果を確実なものとしたい。そして、文学・文化・考古学の融合的研究を確実に推進し、日・中・韓三カ国の古代の文化交流の様相を解明し東アジア文化交流の理解に貢献したい。
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Research Products
(14 results)