2023 Fiscal Year Research-status Report
墓の顕示機能の分析と墓誌の表現分析を基盤とした日中韓三カ国の文化交流の融合的研究
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20K00330
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
廣川 晶輝 甲南大学, 文学部, 教授 (40312326)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 万葉集 / 墓 / 古墳 / 墓誌 / 輓章 / 日中韓文化交流 / 山上憶良 / 視点 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は日・中・韓三カ国の古代文化交流の様相を解明し東アジア文化交流の理解に貢献することを最大の目的とするものであり、文学・文化・考古学の融合的研究を推進している。研究代表者廣川晶輝は従来指摘されていない日中文化交流の道筋を解明し、廣川晶輝「山上憶良作漢文中の「再見」小考」(『甲南大学紀要 文学編 日本語日本文学特集』,148号,2007年3月)という結実を見た。本研究課題でもその成果を基盤として山上憶良の一大漢文作品「沈痾自哀文」(『万葉集』巻5)の表現分析を掲げている。2023年度の研究成果として、その「沈痾自哀文」の表現を分析した、廣川晶輝「山上憶良「沈痾自哀文」について―冒頭の「竊以」の表現分析を中心に―」(『甲南大學紀要 文学編』THE JOURNAL OF KONAN UNIVERSITY Faculty of Letters,174号,2024年3月,1~22頁)の公表がある。同論考の概要は以下の〔〕内のとおり。〔「沈痾自哀文」冒頭の表現「竊以」が『文選』李善注上表文にあることを日本上代の官人達は知っていたが、実際の用例は多くはない。『万葉集』における用例は憶良の二例のみである。漢土における「竊以」は、漢籍・仏教関係書籍の区別を問わず広く行き渡っている。ひとつに梁簡文帝「三月三日曲水詩序」等に見られる知識人達の筆法がある。ひとつに仏教関係書籍の用例がある。その裾野はきわめて広い。ある一部の種類の漢籍や仏教関係書籍に偏るのではない、という広がりの様相を看取できる。山上憶良の「竊以」使用には、中国(・韓国)における広がりとの親和性がある。日本の状況との〈断絶〉、中国(・韓国)との〈地続き〉の様相を見出せる。この視座は、中国・韓国・日本における文化の伝播と定着の状況を研究する比較文化研究にも資する。〕という概要である。まさに、本研究課題の体現となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者廣川晶輝はすでに、「山上憶良作漢文中の「再見」小考」(『甲南大学紀要 文学編 日本語日本文学特集』,148号,2007年3月)の公表をとおして、中国金石文の表現が日本上代文学の表現に与えた影響を解明し、日中文化交流の従来指摘されてこなかった道筋を明らかにし得ている。その研究の発展形として本研究課題においても、山上憶良の長大な漢文作品「沈痾自哀文」(『万葉集』巻5)の表現分析を掲げている。 本研究課題における2020年度~2022年度をかけて、この長大な漢文作品「沈痾自哀文」の本文校訂作業を綿密かつ正確に実施することができた。そして、その本文校訂作業における研究成果を、2023年度、廣川晶輝「山上憶良「沈痾自哀文」について―冒頭の「竊以」の表現分析を中心に―」(『甲南大學紀要 文学編』THE JOURNAL OF KONAN UNIVERSITY Faculty of Letters,174号,2024年3月,1~22頁)にまとめる進捗を見た。 また、2023年度には、廣川晶輝「笠金村「天平元年冬十二月相聞長歌作品」について」(『日本文学』(日本文学協会),72巻8号,2023年8月)を公表することができた。この論考は、作品世界の〈地点〉〈視座〉が効果的に提示されることで見えているのに逢えない恋情を歌い得る表現が達成されていることを論じた論考であり、本研究課題における研究手法からの派生・発展形の論考である。本研究課題の「研究計画調書」では、幹線道・航路とその近くに築造された墓・古墳との位置関係を、吉本昌弘氏「摂津国八部・菟原両郡の古代山陽道と条里制」(『人文地理』33巻4号、1981年8月)等の考古学的知見を生かして解明した。つまり、どこから墓を見て歌うのかについてを分析したわけである。その研究成果が、〈地点・視座〉分析という新たな研究の方向を醸成する進捗を見た。
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Strategy for Future Research Activity |
所属大学において新型コロナウイルス感染防止対策本部は解散されたのだが、新型コロナウイルス感染症は依然として脅威となっている。新型コロナウイルス感染症の状況を良く見定め、安全性を確保したたうえで、古墳・墓の臨地調査研究を実施していきたい。 すでに研究協力を得ている群馬県安中市教育委員会教育部文化財保護課埋蔵文化財係係長(文化財保護主事)井上慎也氏の御協力のもと、古代幹線道「東山道」およびその前身である「古東山道」の要衝の地における「古墳の機能・機制」の究明を、最終年度の今年度は目指す。その究明のためには、「後閑3号墳」「下増田上田中1号墳」の臨地調査研究が必須である。両古墳の「T字形石室」の形状は横穴式石室が幹線道を通って中央から伝播した証であるという知見をすでに得ている。つまり、本研究課題が標榜する〈幹線道路の要衝の地における古墳の機能・機制の究明〉に適確である。また、同地域の古代東山道に面す「簗瀬二子塚古墳」の副葬品と韓国祭祀遺跡との関連の研究も推進させたい。さらに、すでに研究協力を得ている奈良県生駒郡平群町教育委員会葛本隆将氏の御協力のもと、「穹窿状」石室を持つ同町の「宮山塚古墳」の臨地調査研究も実施したい。同古墳は大韓民国忠清南道の「宋山里古墳群」の5号墳の形状と酷似する。「宮山塚古墳」の臨地調査研究をとおして「韓国-日本」の文化交流の様相を考究したい。そして、文学・文化・考古学の融合的研究を確実に推進し、日・中・韓三カ国の古代の文化交流の様相の解明によって東アジア文化交流の理解に貢献したい。 今後も、『万葉集』の本文校訂作業を基盤とした付訓・解釈作業を積極的に推進する研究会を定期的に開催する。そのことで今後も、研究者間の良質なネットワークを維持し、科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付に基づく良質な研究成果を、社会に向けて公表することに努めたい。
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Research Products
(9 results)