2023 Fiscal Year Research-status Report
作家の文学形成と「地方同学コミュニティ」の研究―井伏・高田と宮沢賢治の場合―
Project/Area Number |
20K00331
|
Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
青木 美保 (秋枝美保) 福山大学, 人間文化学部, 教授 (40159330)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平 浩一 国士舘大学, 文学部, 教授 (00583543)
平澤 信一 明星大学, 教育学部, 教授 (20270316)
大野 眞男 岩手大学, 教育学部, 嘱託教授 (30160584)
栗原 敦 実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (40086822)
田中 雅和 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (40155164)
前田 貞昭 兵庫教育大学, その他部局等, 名誉教授 (60144797)
塩谷 昌弘 盛岡大学, 文学部, 准教授 (80644369)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 日本近代文学史 / 地方同学コミュニティ / 表記史 / 文学と美術の関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の起点となった井伏鱒二の中学時代の級友・高田類三宛書簡の研究成果を、2023年2月に『井伏鱒二未公開書簡集 ある級友への手紙』(青木〔秋枝)美保・前田貞昭共編著、和泉書院)によって公刊し、「地方同学コミュニティ」という研究アプローチの具体的な方法が、研究メンバー全員に共有された。 それを踏まえた調査の成果を、2024年3月17日・18日福山市内で開催した第2回研究集会で発表し、研究成果の共有と今後の展開を協議した。その概要は、下記の通りである。 大野眞男「近代文学作品における方言使用とその機能―宮澤賢治作品に焦点を当てるために―」 栗原 敦 「賢治の「方言研究」の前提としての「賢治テキスト」の処理に関する覚書」田中雅和「文学作品(公的表現)と書簡(私的表現)における賢治の生活語」前田貞昭「地方漢詩誌としての回天詩閣『詩』と井伏素老」森 義真「啄木・賢治と交流のあった人々」平澤信一「盛岡の詩誌「天才人」に賢治とともに寄稿していた巽聖歌」塩谷昌弘「「岩手師範学校の水沢グループについて」(若松千代作を中心に」青木美保「井伏鱒二・宮沢賢治の文学史的位置づけについての仮説2」 1910年代の美術と文学―地方と中央画壇の関係について研究を担当する美術館館長3名(田中淳氏、谷藤史彦氏、平澤広氏)については、青木が訪問時(3月10日、3月14日・15日)の報告をした。また、ゲストスピーカ―として、福山市加茂町在住の世良正文氏から「少年期の井伏鱒二に影響を与えた人々について」と題して小学校時代の教育環境について説明を受けた。 今後の研究計画について、研究期間を1年延長し、2024年度開催予定のシンポジウム2回を2025年度とすることを決めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間の2020年度・2021年度はコロナ感染状況が全国的なものであったため、他県への調査、高齢者に対する聞き取り調査などが全くできなかったことが、研究の全体的な遅れにつながる原因となっている。2022年度以降は、調査を再開したことなどが影響したことと、それを踏まえた第1回研究集会を2023年3月5・6日に盛岡市内で開催できたことにより、漸く研究メンバーのそれぞれの研究成果が共有され、その後は各メンバーの研究は新しい調査結果の報告によってある程度進んできていることを、第2回研究集会(2024年3月17日・18日、福山市内)で確認できた。しかし、当初の予定通り、2024年度にまとめのシンポジウムを2回(盛岡・福山各1回)を開催することは無理であり、研究期間を1年延長して2025年度に開催することにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、新しい近代文学史の視覚を提示することを目指している。それを、1890年代末の生まれで、1910年代前半に学校教育を受け、1920年代前半に文学活動を始めたという意味で同世代の作家宮沢賢治と井伏鱒二を、「地方同学コミュニティ」という観点から文学史上の新しいグルーピングを提示することによって示すことを目指している。そのための観点として、方言使用の特徴、級友宛の書簡に見える表記の特徴、同学コミュニティの文化的実態、教育環境(所属学校図書館の蔵書)の影響、地方の文学活動における同学コミュニティの状況、1910年代の文学と美術の表現方法の影響関係、父祖の時代からの文学的環境の影響という多角的視点から、この世代の文学者の文学形成過程に迫ってその特徴を明らかにする。これまでの研究成果においては、宮沢賢治に関する研究が進んでおり、井伏鱒二の出身地における文学形成の状況について、賢治の研究項目と共通する項目での調査が今後の課題となる。
|
Causes of Carryover |
2020年度・2021年度の2年間の調査計画が、全国的なコロナ感染状況により全くできなかったため、累計的にその2年間の費用が繰り越されており、2023年度1年間では使い切れなかったためである。そのため、2024年度が研究期間最終年度であるが、研究期間を1年間延長して、2024年度に予定の調査を執行し、その成果を踏まえて2025年度にその成果を総合するシンポジウムを行う予定である。
|
Research Products
(4 results)