2020 Fiscal Year Research-status Report
「出雲国造神賀詞」神話の研究:平安朝初頭の祭儀神話としての考察
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20K00333
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Research Institution | Numazu National College of Technology |
Principal Investigator |
小村 宏史 沼津工業高等専門学校, 教養科, 教授 (50734688)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 出雲国造神賀詞 / 先代旧辞本紀 / 鎮魂 / 神宝 / 出雲氏 / 物部氏 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、「出雲国造神賀詞」詞章の 独自記述 を支える 出雲国造の祭祀概念を明らかにすることを中心に研究活動を行った。その成果として、「『先代旧事本紀』「天璽瑞宝十種」の形成について ――出雲の神宝献上を手がかりに――」を記した(東京大学国語国文学会『国語と国文学』通巻1174号:第98巻第9号に掲載決定済)。 当該論文は、『先代旧事本紀』独自記事の一角を担う「天璽瑞宝十種」(以下、十種瑞宝)なる神宝について、「出雲国造神賀詞」奏上儀における神宝献上とかかわらせ、両者の背景にある〈鎮魂〉観を明らかにしたものである。『先代旧事本紀』の「天璽瑞宝十種」についてはこれまでほとんど検討の対象とされておらず、「出雲国造神賀詞」との関係性のうえで意義解明を試みた論考は皆無である。その意味で、出雲氏と物部氏それぞれの祭祀概念の関係性を明らかにしたという点で、意義のある成果を示し得たと考えている。 さらに、出雲氏と物部氏の〈鎮魂〉呪術に関する影響関係について、文献上の〈鎮魂〉記事や、宮中および石上神宮での鎮魂祭儀の検討を通し、〈鎮魂〉によって支えられる国家秩序という概念が当時存在したことを示し得たことも当該論文の成果といえる。これは、旧来内在魂の揺動や遊離魂の付着といった観点で説かれてきた古代の〈鎮魂〉観自体について、再考を促すものであり、「出雲国造神賀詞」詞章解釈の重要な前提となることはもちろん、多くの上代文献について新たな〈読み〉の可能性を広げる意義をも有するものと認識している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルス禍における行動制限もあり、資料探索にやや手間取った。結果、論文の成果発表が次年度になってしまったが、執筆・投稿自体は年度内に行えているため、次年度以降への影響はないと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルス禍における行動の制約はあるが、可能な限り資料探索を行う。調査に支障が生じた場合は、所属学会や過去の共同研究で構築した人脈を活用し、必要な資料の検索等の情報を得られるよう、速やかに適切な研究者にあたるなどの対策を取る。
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Research Products
(1 results)