2020 Fiscal Year Research-status Report
平安初期歌合における和歌表現の研究-宇多院をめぐって-
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20K00358
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Research Institution | Kobe College of education |
Principal Investigator |
竹下 麻子 (三木麻子) 神戸教育短期大学, こども学科, 教授 (60544947)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸本 理恵 関西大学, 文学部, 准教授 (10583221)
惠阪 友紀子 京都精華大学, 人文学部, 講師 (90709099)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歌合 / 宇多院歌壇 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は新型コロナ感染症の感染拡大防止のため、緊急事態宣言が二度発出され、実地調査や対面での研究会の開催が困難であったが、Zoomを使用して遠隔会議での11回、会場を利用しての1回の研究会を実施し、春日井市道風記念館での古筆展示で該当歌合資料の実見調査を行うことができた。 宇多院の周辺で行われた歌合について、まだ実態が十分には解明されていない歌合を取り上げ、その開催意図を探ることが研究テーマの一つである。四月から①〔寛平五年九月以前秋〕是貞親王家歌合、②延喜元年八月十五夜或所歌合、③〔寛平八年六月以前后宮胤子歌合〕(『平安朝歌合大成』の呼称による)の注釈を進めた。 ①については和歌注釈が終わり、当該歌合について現時点で解明したことを三木麻子が「是貞親王家歌合について」(『百舌鳥国文』30号・大阪府立大学日本言語文化学会)にまとめた。課題歌合の注釈完了後に全体を通じて考察するための基本資料である。 ②については、池田和臣氏『古筆資料の発掘と研究』に新出資料が掲載されたことで検討できる歌数が増え、『古筆学大成』21巻に「開催未詳歌合切」として載るものが、『平安朝歌合大成』で某家所蔵とした断簡であることが確認された。また、③の歌合資料は、江戸期の写本が残るが、歌合断簡で『平安朝歌合大成』に記録されたものは、『古筆学大成』21巻に所載のものもあるが、実見できない断簡も残る。その中で、『古筆学大成』21巻にはない、田中登氏『古筆の楽しみ』に掲載された断簡を道風記念館で実見することができた。 今年度の注釈と成果で、当初予定した小規模歌合以外に、①③に成立の面で大きく関わると結論できた『寛平御時后宮歌合』を検討すべきことが明らかになった。主催者としての中宮(后)の推定、および『新撰万葉集』との関わりについて、『寛平御時后宮歌合』を視野に入れる必要性があるため、研究対象とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は新型コロナ感染症の感染拡大防止のため、行動が制限され調査等に出かけるのが困難であったが、研究会については遠隔会議で進めることができた。11回の研究会により、歌合歌の解釈を進め、個別の歌合の開催時期や開催の意図について検討できている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究業績の概要で記したように、百番の番を含む『寛平御時后宮歌合』を視野に入れて、宇多歌壇の歌合歌の解釈と歌合の開催意図を再検討する必要がある。本来、本研究は歌合歌を解釈することだけが目的ではなく、宇多院歌壇や歌合史の解明を目指すことを念頭に進めてきたが、全体の解明のためにも、和歌解釈を効率よく進めることが必要となる。幸い、『寛平御時后宮歌合』は先行研究も比較的多い歌合であるので、遠隔会議であっても進められる解釈を今年度の重点とする。
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Causes of Carryover |
緊急事態宣言発出などで、資料調査を目的としていた研究分担者の研究活動に大きな制限があり、研究費が使用できなかったため。次年度は、研究会の対面開催ができればその会場費や実見調査・資料踏査のために使用したい。
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Research Products
(1 results)