2020 Fiscal Year Research-status Report
Ahabs, or Aspects of the Posthuman
Project/Area Number |
20K00390
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
小林 正臣 琉球大学, 教育学部, 准教授 (30404552)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポストヒューマン / サイボーグ / エイハブ / 白鯨 / 物質への意志 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は主として、研究を遂行するに必要な資料収集を行った。また、それと並行して事前に作成を進めていた研究論文"The Will to Matter: Captain Ahab, the Cyborg"が日本英文学会の会誌Studies in English Literatureに掲載された。 上記論文は、ハーマン・メルヴィルの代表作『白鯨』(Moby-Dick; or, The Whale)をポストヒューマンの見地から再読しようとする試みである。まず本稿では、肉体と人工を混在させたサイボーグという概念には往々にして義肢の使用者が含まれることに着目し、片足が義足であるエイハブ船長をサイボーグとして再定義している。すると、なるほど彼が義肢に対して負の感情を抱えているだけでないことがわかる。そして、むしろ宿敵である白鯨を斃すためにみずからをサイボーグ化しようとしている意志を見出すことができる。この意志こそが本稿の題名である「物質への意志」が意味するところである。そしてみずからをサイボーグ化することは、白鯨に打ち勝ち不死に近づこうとする意志でもある。この意志を作品から抽出し、その重要性を説くことで、本稿は現在進行形で繰り広げられているポストヒューマンをめぐるディスコースに新たな可能性を付与している。 本稿で獲得できた見地を基盤にすることで、さらなるアメリカ文学史における「エイハブたち」を発見することができると予想される。たとえばサイボーグだけでなく、アンドロイドなども研究の射程に入れることで、エイハブ船長をめぐる考察を基軸とした議論領域の拡大が望める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍ということから旅費を伴う資料収集や研究者との情報交換は行えなかったが、そのことを除けば概ね計画に沿った研究活動が行えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に引き続き、コロナ禍においても可能な資料収集を行う。それと同時に、資料の検討を行いながら可能な限り研究論文の作成に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって当初予定していた資料収集および情報交換等を行うことができなかった為。
次年度は、コロナ禍においても可能な研究活動を模索しながら、使用額を弾力的に活用していくように努める。その方策として、現在所属している学会が発行する会誌以外にも投稿を行う、あるいは出版社とのコンタクトなども行うことを考えている。その際には投稿料や掲載料、あるいは出版費用などを要することが予想されるので、それらを充たすことで生産的な研究活動を目指していく。
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Research Products
(1 results)