2023 Fiscal Year Annual Research Report
十九世紀フランス哲学における身体観の再検討:『未来のイヴ』の新たな読解にむけて
Project/Area Number |
20K00486
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
福田 裕大 近畿大学, 国際学部, 准教授 (10734072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上尾 真道 京都大学, 人文科学研究所, 研究員 (00588048)
中筋 朋 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (70749986)
相澤 伸依 東京経済大学, 全学共通教育センター, 教授 (80580860)
野田 農 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (20907092)
井上 卓也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (30916515)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ヴィリエ・ド・リラダン / 『未来のイブ』 / 19世紀フランス哲学 / 象徴主義 / 科学と哲学 / 身体 / 精神医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ここまでの研究成果を総括するための企画として、シンポジウム「催眠とアンドロイド:ヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』をめぐるふたつの会話」(2023年12月16日/於:京都大学人文科学研究所)を開催した。この機会に発表された本研究の最終的な成果は以下の通りである。まず、従来の研究において「反=科学」的と形容されてきた『未来のイヴ』は、むしろ同時代の科学的言説を大量に取り込むことで成立しており、この特徴を無視することはできない。次いで、作中で繰り広げられる人造人間「ハダリー」に関する科学的描写を読み込むと、このアンドロイドに関する作中の説明が複数に分裂していることが見えてくる。とりわけ、創作の最終段階で付け加えれたソワナの存在は、それ以前に書かれていた人造人間のあり方と真っ向から対立しており、その意味で大きな矛盾をなしている。けれどもこの矛盾は必ずしも作品にとっての瑕疵ではなく、むしろそうした矛盾があるからこそ、『未来のイヴ』という作品はひとつのテクストのうえに複数の物語を共存させるような多声的作品として存立することができる。さらにいうとこの作品は、同時代の様々な知を共存させているという意味でも多声的であり、例えば実証科学と心霊科学のような対立的な知でさえも、それぞれの異質性を抹消することなしに自身のうちに取り込んでいる。こうした意味での矛盾/多声性を否定することなく、それらがテクストのうえでどのように存在しているかを観察する作業を基盤としてこの作品の実態を捉え直したことことが、本研究の成果である。なお、上記のシンポジウム終了後、以上の成果を書籍化するための準備をすでに進めており、年度終了時点で計画されている全体のおよそ7割を執筆済みである。同書については、2024年度に公募される科研費「研究成果公開促進」に申請し、2025年度中の刊行実現を目指している。
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