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2022 Fiscal Year Research-status Report

Poetics of recognition-discovery in French Classical Tragedy

Research Project

Project/Area Number 20K00496
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

永盛 克也  京都大学, 文学研究科, 教授 (10324716)

Project Period (FY) 2020-04-01 – 2024-03-31
Keywords詩学 / 認知 / ラシーヌ / アリストテレス
Outline of Annual Research Achievements

本研究はアリストテレス『詩学』の主要概念である「ミメーシス」をもう一つの主要概念である「認知=発見(アナグノリシス)」と関連づけることによってフランス古典悲劇における創作と受容の両面について考察を行うことを目指すが、本年度は「認知」が単なる物理的発見ではなく、より広い意味での認識や自覚、心理的発見として拡大解釈されていたことを17世紀フランスの文献資料により検証した。
スキュデリーの『専制的な愛』の序文として書かれたサラザンの『悲劇論』(1639年)やラシーヌによる「ソポクレース『エレクトラ』注解」(年代不祥)、同じくラシーヌによるアリストテレス『詩学』のラテン語訳付註解書(フィレンツェ、ジュンタ、1573年、二折版)の余白への書き込み(年代不祥)、さらにダシエによるアリストテレス『詩学』の翻訳と注解(1692年)などを分析することによって、「認知」を心理的発見としていわば拡大解釈し、悲劇において無知や過誤の中にある登場人物が真実を「発見」する行為を「認知」としてとらえる読解が行われていたことを論証した。この解釈・読解に従えば、悲劇の筋の転回点が登場人物の認識や自覚の瞬間に対応する─つまり「逆転」と「認知」が同時に起きる─ことになること、また、無知あるいは自己喪失状態にある登場人物に対し劇的アイロニーの原則により常に優位に立っていたはずの観客において、その登場人物に対する同一化が妨げられるわけではないこともあわせて指摘した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

16世紀および17世紀のイタリア、オランダ、フランスの理論家が詩学における「認知」の概念をどう理解していたかを明らかにするため、アリストテレス『詩学』の翻訳・注釈書、およびそれをふまえた詩学・悲劇論の該当箇所を比較・検証することを本年度は予定していたが、種々の事情から、フランス国立図書館における資料の閲覧を行うことはできなかった。また、本研究課題についてフランスの研究者と直接意見交換を行うこともできなかった。したがって、フランス17世紀の詩学における「認知」の概念についての比較・検証作業はやや遅れることとなった。
その一方で、フランス17世紀における詩学・悲劇論のうち、これまで必ずしも十分に研究されてはこなかった文献資料についての研究を進め、一定の成果を得ることができた。特に、「認知」の概念を「身元が不明であった人物の正体の発見」という狭義に限定せず、心理的発見、つまりそれまで意識されていなかった因果関係や動機の把握・認識としてとらえる17世紀の解釈の興味深い例について具体的な分析を進めることができた。さらに、この解釈が観客による悲劇の構造の把握という作品受容の核心的部分に関わるという仮説を検証することができた。

Strategy for Future Research Activity

当初計画していた通り、16世紀および17世紀のイタリア、オランダ、フランスの理論家が「認知」の概念をどう理解していたかを明らかにするために、アリストテレス『詩学』の翻訳・注釈書、それをふまえた詩学・悲劇論の該当箇所の比較・検証作業を進めていく予定である。
また、「認知」の概念を手掛かりにして、コルネイユ悲劇とラシーヌ悲劇における「結末部」の比較・検証作業を進めていく予定である。コルネイユ劇とラシーヌ劇の本質的差異を検証することは本研究課題において重要な部分を占めることになる。さらに、「認知=発見」概念の拡大解釈を作品の解釈・受容との関連において検証し、登場人物のレベルにおける認識・発見としての「認知」と観客・読者のレベルにおける作品の構造や意味の把握としての「認知」を統合した視点を提示することを目指す。

Causes of Carryover

新型コロナウイルス感染症の影響および研究代表者の本務校での業務負担の増加のため海外文献調査を実施することができず、外国旅費の執行がなかったために次年度使用額が生じた。当該助成金については延長が承認された補助事業期間に有効に使用する計画である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2023

All Journal Article (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 2 results,  Invited: 2 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] La rhetorique epistolaire des passions dans les Lettres portugaises2023

    • Author(s)
      Katsuya Nagamori
    • Journal Title

      Zinbun

      Volume: 53 Pages: 9-23

    • Peer Reviewed / Int'l Joint Research
  • [Presentation] La rhetorique epistolaire des passions dans les Lettres portugaise2023

    • Author(s)
      Katsuya Nagamori
    • Organizer
      Colloque international : Les belles lettres dangereuses : le destin de l’epistolarite litteraire du XVII e au XIX e siecle
    • Int'l Joint Research / Invited
  • [Presentation] Le sentiment de honte dans les tragedies de Racine2023

    • Author(s)
      Katsuya Nagamori
    • Organizer
      Colloque international : Le Vermillon de la vertu : usages et valeurs de la honte : l’epoque moderne (XVIe-XVIIIe siecles)
    • Int'l Joint Research / Invited
  • [Book] ハプスブルク事典2023

    • Author(s)
      永盛克也
    • Total Pages
      2
    • Publisher
      丸善出版

URL: 

Published: 2023-12-25  

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