2022 Fiscal Year Research-status Report
A crosslinguistic study of the ecology of the verb 'naru' -- with special reference to the typological contrast between 'DO-language' and 'BECOME-language'
Project/Area Number |
20K00537
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池上 嘉彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (90012327)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 言語類型論 / 事態把握 / <ナル的>/<ナル的>言語 / 動詞<なる> / <推移>と<出現> |
Outline of Annual Research Achievements |
今回の科研費においても当初の計画として少なくとも年一度の海外出張によるインフォーマントとの対面調査、ないしは、関連国際学会での研究成果発表を予定していた。しかし、長引くコロナ禍のため、果たすことが出来なかったが、オンライン形式による国際シンポジウムの招待講演の機会があったので、海外での発表の機会は持つことができた。 他方、これまでの成果をまとめるという方向においては著しい展開があった。関連テーマでの共同研究を進めてきた科研費(代表:守屋三千代)グループと協力して、これまでの成果を確認する研究会をオンライン形式で数回実施(2022年3月、5月、9月、2023年3月(一部対面))し、その共同成果を守屋・池上(編集代表)『「ナル的表現」をめぐる通言語的(crosslinguistic)研究――認知言語学と哲学を視野に入れて』と題する編著として、40数名の寄稿者による400ページを超える大著として東京のひつじ書房より2023年晩夏には刊行の予定となり、そのための原稿整理、出版社への引き渡し等の作業を完了することが出来た。 この間の作業については、院生、ないしは、元院生レベルの若い人たちのアルバイトに負うところが多かったが、その謝金としては、海外出張費として未執行となっていた分のかなりな部分を転用することができたのが幸いであった。 私自身の科研費(20K00357)については、既に一年間延長の承諾が得られており、コロナ禍の緩和状況を視野に対面による研究者交流など、もっとも有意義な使途を見極めつつ、対応していきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究グループの中心メンバー、そして、それに研究グループに常時属しているのではないが、研究経歴からして科研費による研究テーマに十分関心のあると思われる外部の研究者に特別に執筆を依頼するという形で進めた編著の刊行が視野に入るに至り、本研究の一つの重要な達成であることは間違いない。 しかし、研究費による研究で意図されている目標からいうと、これはまだ最初の一歩に過ぎない。次の段階として当然必要とされるのは、著書の中で各研究者によって展開されている考察をすりあわせてさらなる深みのある考察へと持っていくこと、そしてそのために、提示されている考察を相互に検討しあい、どのような、また、どの程度の共通認識が得られるかを直接論じ合うという機会の設定である。 コロナ禍の広がりがようやく収束に向かいそうな状況になってきたことから、これからはオンラインでなく、直接対面で詳細な検討が可能になる見込みが十分あるように思える。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究対象の諸概念や分析事項について研究者の相互理解を深め共通認識を築いていくことの重要性とともに、このアプローチには調査の対象とする言語の数と種類をさらに多くするという努力が欠かせないことも課題である。 比較的よく知られた言語の場合でも、例えば、アイルランド語、フィンランド語、タミル語などは、対象に加えることが望ましい言語であり、まだ手のついていないアフリカ大陸の諸言語、アメリカ大陸、オーストラリアの先住民の言語、あるいは少数の話者しかいない絶滅危惧言語などは、いくつかでも加えることが好ましい。研究の趣旨からして対象としたい言語は限りない。 実践の困難さは十分予測できるが、言語横断的な研究を目指すという趣旨からすれば、少しでも広範・多様な言語を調査対象とすることが望ましく、次年度はそれが少しでも実現するように進めたい。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では、海外出張によるインフォーマントとの直接対面による言語調査、ないし海外での関連学会、研究会への出席を予定して海外出張費を計上していたが、コロナ禍のため、渡航困難となり、予定した経費が使えなかった。(学会もオンライン形式での出席ですんだ。) 幸い使途変更許容額の範囲であるので、グループでの研究成果を論文集として刊行するための原稿整理のためのアルバイト費用、および研究遂行上の必要な書籍の追加購入などに充てる予定である。
|
Research Products
(6 results)