2023 Fiscal Year Annual Research Report
言語処理過程で観察されるP600効果の実験間・個人間の差異を生み出す要因の検討
Project/Area Number |
20K00539
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安永 大地 金沢大学, 人文学系, 准教授 (00707979)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 衡聴 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (40469896)
矢野 雅貴 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (80794031)
荒生 弘史 大正大学, 心理社会学部, 教授 (10334640)
諏訪園 秀吾 独立行政法人国立病院機構沖縄病院(臨床研究部), 神経内科, 脳・神経・筋疾患研究センター長 (50345518)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 言語理解 / 事象関連電位 / P600 / 振幅の変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、脳機能計測技術が広まり、言語学においても言語処理過程の解明に向けて脳波データが盛んに用いられるようになってきた申請者らの研究やその他の研究から、言語処理は個人内・個人間の可変性が高いことが明らかとなってきており、安定的に言語関連脳波を計測する方法の開発は重要である。データの質や再現性が高まることで、言語処理理論の一層の発展が期待される。最終年度には1つの英語論文の公開と1つの研究成果報告発表を行った。 まず、英語論文(Yasunaga, 2023)では、P600効果が言語処理に特有の反応なのかどうかを探る研究成果を報告した。従来、日本語において目的語が主語に先行する語順(かき混ぜ語順)は統語的な処理負荷が高いという報告が多くなされてきた。この時に観察されるP600効果が言語処理特有であれば、実験課題に関わらず同様の効果が観察されることが期待される。一方で言語処理を含む広範な認知処理一般に関わる処理負荷を反映したものがP600効果であるならば、実験の手続きによってその観察のされ方が変調されることが予想される。実験では絵画-文一致課題、文-絵画一致課題の2つが行われ、P600効果の現れ方が異なり、前者の課題の方が処理負荷が大きいことを示唆する結果が得られた。この結果はP600効果が統語処理負荷特有の反応ではなく、より広範な認知処理一般に関わる負荷を反映した可能性が高いことを示唆するものであった。 次に研究成果発表(安永・川口, 2024)では、実験参加者の気分および処理する文の意味内容によってP600効果が変調するかどうかについての実験結果を報告した。実験の結果、参加者の気分がよりポジティブな状態で、処理する文の内容も明るいものがP600効果を大きくするということが示された。この結果に対する考察がまだ不十分であるため引き続き考察を深め、論文にまとめられるようにする。
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Research Products
(2 results)