2021 Fiscal Year Research-status Report
中国語の結果義と完了アスペクトの接点:結果補語の用法に反映された中国語的な発想
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20K00540
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
丸尾 誠 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (10303588)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中国語 / 結果補語 / 結果義 / 完了アスペクト / 中国語的な発想 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究成果の一部である論文「中国語の動補フレーズ“V好”に関する考察 ― 行為の目的意識という観点から ―」では、動補フレーズ“V好”の用法について、“好”の使用の動機づけの解明を念頭に、動作主・発話者の認識に関わる「行為の目的」という語用論的な要素を導入して考察を行った。 中国語の結果補語“好”の用法について見ると、完成の意味では“完、成”(例:建好了/建完了/建成了[(いずれも)建てた])、目的の達成の意味では“到、着”(例:買好了/買到了/買着了[(いずれも)買った])、付着に関わる概念では“上、住”(例:把門関好了/関上了/関住了[(いずれも)ドアを閉めた])といった具合に、他の複数の代替可能な補語との関わりをそれぞれ見い出すことが可能であるものの、“好”の表す主な文法的意味に関しては、「完成義」(例:作業写好了。[宿題をやり終えた。])と「満足義」(例:我昨晩又没睡好。[私は昨夜、またよく眠れなかった。])の2つが挙げられる。満足義というのは、動作を行う際に結果を想定していることによる(目的の設定)。とりわけ“好”を用いた場合には、行為の遂行により目的が達成されることから、それが満足義にリンクすることになる。本論文では補語“好”と結び付く頻度の高い「結果を求める行為」を表す動詞(フレーズ)を取り上げ、その意味特徴について、「製作に関する行為」「解答・結論を求める行為」「獲得・確保に関する行為」といった区分を設けて分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の遂行にあたっては、夏休みや春休みといった長期休暇を利用して中国本土に赴き、資料収集および大学教員との議論やインフォーマントチェックを経たうえで論文を作成するという方式をこれまで採用してきた。しかしながら、昨年度に引き続き今年度も、コロナ感染拡大防止の観点から渡航が叶わず、本研究課題の進行に影響が及ぶ結果となった。オンライン通信やメールによるやり取りを行ってはいるものの、当該の表現の成立の可否やニュアンスが問題となる本研究分野の性格上、やはり中国人研究者と直接会って議論を重ねる方式と比較すると、効率が悪くなることは否定できない。 また令和3年度は(本課題申請時には想定していなかった)学外の職務を複数兼任する必要があり、そちらに時間を割かれたという事情も存在する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、当面の間は中国出張に行ける望みが薄い状況に鑑みると、令和4年度においても上記7の欄で述べた状況が繰り返されることになると予想される。今後は複数の論文を並行して執筆するなどして、作業効率をあげることを考える。用例の収集に関しては、従来と同様に主として小説やインターネット上のコーパスを利用することになる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために、研究会の類はオンラインとなり、また夏休みなどに予定していた中国での調査にも行けなかったために、本課題の申請時に見込んでいた出張費を使用する機会がなく、その結果、次年度繰越金が生じた。昨年度も同様の状況であったために、その分を関連書籍の購入に回すなどしたものの、すべての額を使用するには至らなかった。今年度も同様の状況になる見込みが高いと思われる。
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Research Products
(2 results)