2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K00628
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮地 朝子 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (10335086)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 副助詞 / 機能語化 / 連体用法 / ナラデハ / 接辞 / 接語 / 内容語化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、不変化・無活用という形態的特質「体言性」が、日本語の文法変化にいかに関与しているかについて考察するものである。「体言」は、従来「名詞」と重ね合わせて議論されてきたが、本研究では両者を分離し、「体言性」を文法変化の一要因と位置づける。多様な出自から副助詞化しまた副助詞から文法変化して自由形態と拘束形態の間を往還する形式群を観察対象として、副助詞類の文法史研究の精密化、さらには日本語の文法変化を捉える観点の整理を目的とする。 計画2年目の2021年度は、用例調査と成果の論文化を中心にとりくんだ。まず、名詞性(体言性)の指標とされてきたノ連体用法の史的様相に関して、包括的な観察をまとめ、副助詞の機能とノ連体用法の関係は史的に変化していることを述べた。とりわけ現代語では、焦点接語としての機能とノ連体用法は両立可能であり、副助詞句に名詞が後続・隣接する条件で成り立っている。ただし現代語副助詞のノ連体用法は形式ごとに広狭の差も大きく、これを決定づける要因について、さらに考察する必要がある。 「ならでは」の史的変化、特に現代語の様相からも示唆的な成果を得た。「ならでは」は古代語の機能語複合体「なら-で-は」に発し、中世~近世には「しか(~ない)」相当の副助詞となった。ノ連体用法は示さない類であったが、現代語では、属性叙述句構成の接辞として、とりわけノ連体句構成用法「仙台ならではの味」への偏在が顕著である。同時に自立語的用法「ならではの味」も示す。この様相は、第3形容詞とされる「独自」「特有」といった語彙項目に並行的である。副助詞から接辞への変化、さらに第3形容詞に類する自立語用法獲得(内容語化)は、文法変化の一般的な方向性に逆行するが、形態的特質としての体言性に支えられた事例として注目できる。体言性の機能語の変化が、何に方向付けられ、条件付けられていくのか、さらに考察していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
用例収集の作業と論文化を中心に進めた。成果発表は論文2件、講演1件であり、概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき、個々の言語形式の共時的・通時的・地理的動態について、記述の精査を旨とし、機能変化の制約と動態のパターンを見いだす考察を深める。副助詞としてのあり方と体言性を同時に保持する条件については理論言語学、特に統語論、意味論の先端的知見も積極的に参照援用する。内容語化と接辞化といった一見矛盾する方向の文法変化を同時に示す類例については、類型論の知見も参照したい。
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Causes of Carryover |
旅費、海外研究者招聘の経費を支弁できなかったため。次年度以降、状況が許すようになれば執行していく。
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Research Products
(3 results)