2021 Fiscal Year Research-status Report
歴史統語論・一般言語学的観点から見た日本語主語表示体系の歴史的変化
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20K00629
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
金 銀珠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60547496)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 助詞「が」 / 準体法 / 連体修飾 / 新情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究成果として「主格助詞「が」の拡大の準体法の衰退」(『中部日本・日本語学研究会論集』p.139-156)が刊行された。 古代日本語の主語助詞「が」は,現代語の「雨が降る」のような名詞句に後続する用法だけではなく,「~と言ふがあやなき」のように活用語の連体形に後続して主語を表す用法があった。活用語の連体形が体言のように振る舞う用法(準体法)は,歴史的変化の中で特定の言い方を除いて消滅した。準体法の消滅は日本語文法体系の主要な変化として注目されてきた。 本研究では,これまでに注目されてこなかった,準体法の消滅が助詞「が」が主格助詞として確立していく際に,どのような影響を与えたのかについて上代から中世末を対象にして考察した。結果,連体形を主語として受ける「が」の用法が衰退するのと時期を一緒にして,「雨が降る」のような名詞句に接続する助詞「が」の前接語の構文構造と前接語の幅が拡大していくことが確認された。名詞句に後続する「が」は主に「われ」「清盛」のような直接指示をする語類に接続していたのが,連体修飾という構文的手段による指示をする語類に拡大し,「こと」のような形式名詞を前接語に取るようにもなった。また,新情報提示用法を中心とした存在動詞を述語として取るようにもなった。このような変化は,連体形に接続して主語を表す「が」との影響関係が機縁で起きたものではないかと推測された。 従来の研究では,助詞「が」が平安期を経て中世末までには無助詞や「の」より勢力を拡大し,日本語の主要な主格助詞としての地位を獲得していることが報告されている。しかし,現象の整理にとどまり,変化を促す具体的な継起性の説明には乏しい所があった。本研究の成果により,日本語文法の主要変化の一つとして注目されてきた準体法の消滅が主格助詞「が」の拡大と関連している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 採択課題は「歴史統語論・一般言語学的観点から見た日本語主語表示体系の歴史的変化」である。歴統語論的観点から見た日本語主語表示体系の歴史的変化については,成果を蓄積してきている。 しかし,一般言語学的観点から見た変化については,対照する言語の韓国語の資料がまったく入手出来ていない状況にある。韓国語関連の主要論文および歴史的資料がインターネット上で閲覧出来ないことも多く,韓国の国会図書館などを訪れ,資料収集する必要がある。 コロナがある程度収束し,海外に渡航できるようになれば,今年度夏休みには資料調査に行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は採択課題の最後のまとめの年となるため,研究計画は,次のような点を予定している。 1.これまでに収集・分析したコーパスデータを基に,中古・中世・近世の主語表示体系の変化を歴史的にまとめる。 2.上記1を二つの論文に分け,発表する。 3.研究課題最終年度であるため,これまでの研究成果報告書をまとめる。 4.コロナがある程度収束し,海外渡日可能になれば,夏休みに資料収集に出向き,他の言語(韓国語)との比較を少しでも行いたい。
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Causes of Carryover |
2021年度は2020年度同様,コロナウィルス防止対策で,国内・国外出張を控えた。同じ理由で,国内外の研究者を招聘し公開で研究会を行うことが出来なかった。そのため, 旅費と人件費・謝金の予算を使用していない。今年度もコロナウィルスの状況を見ながら,判断していく。
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Research Products
(1 results)