2021 Fiscal Year Research-status Report
拡張した節構文の意味及び構文的知識の言語理解過程に果たす役割に関する研究
Project/Area Number |
20K00634
|
Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
福島 みどり (天野みどり) 大妻女子大学, 文学部, 教授 (10201899)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 構文 / 節構文 / ノガ / 逸脱文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、実際に使用される容認性の低い文の意味を、母語話者がどのように意味理解するかについて、母語話者の「構文」に関する文法的知識の観点から明らかにしようとするものである。特に節を含む種々の構文を実例観察することにより、柔軟な文の意味理解の過程と文法的知識との関係を明らかにしようとしている。 本年度は、これまで個別に考察されてきた「ノガ節」を含む構文群(「太郎がピアノを弾くのが見える」などの明確な格を構成するノガ動詞述語文・「重大な傷を見過ごしたのが事故の原因だ」などの前項焦点のノガ名詞述語文・「中でも特にお勧めなのがこれだ」などの後項焦点のノガ名詞述語文・「応募者数が10年前は100人だったのが今は5人になった」などのサマ主格変遷構文)を包括的に考察することに着手した。これまでの研究の成果から、仮説として、多様な「ノ節」構文における「ノ」には、共通する意味があること、それは、発話者の想定にある概念を指示する〈既定性〉であることを見込んだ。その検証として、「大多数が工学科生だ」のような「ノ節」を持たない文と「大多数なのが工学科生だ」のような「ノ節」を持つ文の意味的差異を分析し、「構文の意味の研究―現象の包括的考察と言語理論の構築へ向けて―」(『国語と国文学』99:5)にまとめた。 また、逸脱的特徴を持つ文を考察・分析する方法論を整理し、内省判断および実例観察が重要であり、この二つの手法は相互に補い合うものであること、それらの補足として多数者に対する言語意識調査が有用であることを「現代日本語文法研究の二つのアプローチに関する考察」(『大妻国文』53)にまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対面による言語調査の代わりに、種々の言語理論に関する吟味や、逸脱文の実例調査をやり直すなど、逸脱文理解に関わる構文研究の基盤に関する考察を深めることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、予定していた母語話者・日本語学習者に対する内省判断調査は、オンラインでの実施を計画する。 オンラインならではの利点を活かす形で、多様な日本語学習者の意味理解過程調査を試行する。オンライン調査の後、コロナ禍が終息すれば、対面でのフォローアップ調査も実施する。 前年度に進めた理論的考察、実例収集調査を中心に、本研究の土台となる構文理論の構築をできるだけ前倒しで進めることとする。
|
Causes of Carryover |
国内外の学会・研究会がすべてオンラインとなり、旅費の支出が無かったこと、日本語学習者及び母語話者を対象とした対面による内省判断調査が不可能であり、それに係る旅費、謝金の支出が無かったことが理由である。 次年度には、オンラインによる調査や、研究成果発表を行う。 また、調査に日本語学習者・母語話者の音声言語資料に基づく実例収集調査を加える。
|