2022 Fiscal Year Annual Research Report
平安期鎌倉期の日本語における格非表示名詞句の運用システム
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20K00638
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
山田 昌裕 神奈川大学, 国際日本学部, 教授 (70409803)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 格非表示名詞句 / 無助詞名詞句 / 平安期鎌倉期 / 有生名詞句 / 無生名詞句 / 係助詞 / 副助詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、平安期鎌倉期において有助詞名詞句(〈名詞句+係助詞〉、〈名詞句+副助詞〉)の中で、格助詞を伴わない名詞句が、統語上どのような成分として振る舞い、どのようなシステムで運用されていたのか、その全体像を明らかにしようとする研究である。 実態としては、係助詞や副助詞の上接語となる名詞句の有生性無生性によって、統語的振る舞いが異なることが明らかとなった。 有生名詞句はそもそも無助詞であってもガ格に大きく偏るが(平安期90%、鎌倉期95%)、係助詞「コソ」「ゾ」「ナム」「ヤ」「カ」、副助詞「ノミ」「ダニ」「サヘ」が下接するとさらにガ格として機能する割合が高く、100%に近くなる。一方で、副助詞「バカリ」「ナド」がガ格として機能する割合は、無助詞名詞句の割合とほぼ同程度であるという結果となった。 無生名詞句が無助詞の場合には、平安期においてはガ格約60%、ヲ格40%、鎌倉期においてはガ格約70%、ヲ格約30%となっているが、係助詞「コソ」「ゾ」「ナム」「ヤ」「カ」が下接すると約80~90%がガ格となる。「ノミ」は約90%、「サヘ」は約85%、「ダニ」は約75%がガ格となっており、ガ格への偏りは見られるものの、ばらつきが認められる。さらに「バカリ」は約50%がガ格、約50%がヲ格と拮抗しており、「ナド」に至っては、約30%がガ格、約70%がヲ格であり、ヲ格への偏りが強くなるという結果であった。 ガ格は「事態認識の中核項目」であり、「選択的指定点ないし文情報の重要点」となることは先行研究で指摘されるところであり、「係助詞及びノミ>サヘ>ダニ」という順で名詞句に焦点が当たりやすいということが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)