2020 Fiscal Year Research-status Report
中世における漢字表記文及び片仮名表記文の表記体混淆文についての基礎的研究
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20K00653
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Research Institution | Hiroshima Bunkyo University |
Principal Investigator |
橋村 勝明 広島文教大学, 教育学部, 教授 (30330674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯貝 淳一 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40390257)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | テキストデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、漢字表記文と漢字仮名交じり表記文が一つの文章内で共存する表記体混淆文の日本語学的特質を明らかにすることにある。そこで、初年度の計画としては研究資料の収集と、研究上の基礎データとなるテキストデータを作成することとした。研究資料の収集は、原本調査を想定していたが、新型コロナウイルス感染拡大により長距離の移動が制限または自粛したために実施できなかった。テキストデータを作成した資料は、内閣文庫蔵『聖徳太子伝宝物集』(請求記号・特119-0009)天正14年写、全11冊である。また、慶應義塾大学附属研究所指導文庫編『中世聖徳太子伝集成』第5巻(勉誠社、平成17年4月)に掲載されている光久寺本についても作成することとした。光久寺本は、四巻本末のみの二帖のみで、内閣文庫本の九巻本末と同文であり、テキストデータを作成することにより二本を比較することができる。これら二つの資料ともに、文字入力については概ね終えることができた。このテキストデータによって、文章内における漢字文の文字列と漢字仮名交じり文の文字列との分布がより明確になった。ただし、『聖徳太子伝宝物集』の本文には漢字文部分の仮名点、漢字仮名交じり文部分の片仮名小書きがみられるが、その情報をテキストデータに反映させるまでには至らなかった。仮名文字が仮名点であるか、片仮名小書きであるかは、その文字を含む表記体が漢字文であるか漢字片仮名仮名交じり文であるかの認定に関わるので慎重を期さなければならない。今後は、仮名点と片仮名小書きとの区別が明確となるようにテキストデータ上に反映させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は研究の基礎となる資料の収集とテキストデータ作成をする計画であった。テキストデータ作成については、研究実績の概要欄に記したとおり概ね計画どおりであるが、資料の収集が進んでいない。資料が活字化あるいは影印として公刊されているものについてはそれを利用することができ、また資料画像をオンライン上で公開している機関については画像を閲覧することができるが、そのような形で公開されていない場合には調査によって直接確認しなければならない。図書目録などには表記体に関する記載が多くの場合なされていないためである。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって長距離の移動が制限されているなか、当初の研究計画で記載していた原本調査をすることができなくなり、二年目以降に延期せざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、整えたテキストデータに基づき、表記体混淆文の日本語学的特質についての検討を進めると共に、表記体混淆文の学術用語としての概念規定をより明確なものとしてゆく。表記体混淆文の日本語学的特質については、例えば以下の視点を設定して研究を進めてゆく。漢字文部分が漢字文としてどのような特質を持っているのかということを、文末の助辞に注目して検討してゆく。また、漢字片仮名交じり文部分については、片仮名書き自立語について、漢字文部分の表記と比較検討してゆく。研究の基礎となる資料の収集については、新型コロナウイルスの感染拡大状況によるが、収束すれば初年度計画をしていた原本調査を実施する。収束しない場合には原本調査を断念し、公刊されている資料、オンライン上で公開されている資料画像を最大限活用したい。
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Causes of Carryover |
初年度は、研究の基礎資料の収集を目的とした原本調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大により長距離の移動が制限され、また自粛をしたために実施できなかった。そのことによって請求した旅費を使用することができず今年度に繰り越すこととなった。今年度は、感染拡大が収束し長距離の移動が可能となれば、初年度実施予定としていた原本調査に取組み、研究費をその費用に充てる。感染拡大が収束しなければ、公刊されている活字・影印資料の購入費用、オンライン上で公開されている画像資料の印刷費用に充てることとする。
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