2021 Fiscal Year Research-status Report
中世における漢字表記文及び片仮名表記文の表記体混淆文についての基礎的研究
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20K00653
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Research Institution | Hiroshima Bunkyo University |
Principal Investigator |
橋村 勝明 広島文教大学, 教育学部, 教授 (30330674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯貝 淳一 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40390257)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 表記体混淆文 |
Outline of Annual Research Achievements |
漢字文と漢字片仮名交じり文との表記体混淆文についての研究方法の試案として、漢字文における助動詞「ケリ」の用字に使用差があることを指摘した。具体的には古記録が事実関係を述べる内容であるのでその事実に対する疑問や断定の文末を必要とするのに対して、軍記のような物語性の高い内容を叙述する上では「物語る」必要から助動詞「ケリ」を表記しているのではないかということである。このことによって、表記体混淆文における、漢字文の特質の解明に繋がってゆくのではないかと考える。また、前年度のテキストデータ作成を通じて得られた知見より、本研究課題のキーワードとなっている「表記体混淆文」の概念規定をした。まず、表記体の混淆現象としては、語、文、文章のそれぞれのレベルにみられることを指摘した。それは、一の文章中に漢字表記文と漢字仮名交じり表記文とが混淆しているような状況における、漢字表記文あるいは漢字仮名交じり表記文は、文章全体が漢字表記文あるいは漢字仮名交じり表記文のそれとは異なる、混淆文における表記あるいは用字として捉えなければならないと考えるからである。そこで、本研究の研究対象としては、文レベルにおける文節ごとの混淆現象についての意義を認識しつつも、文章レベルにおける文の混淆現象を対象とすることとした。研究方法としては二つの方法について検討をした。まず、表記体混淆文を用字法の視点で捉えた場合、漢字仮名交じり表記文の用字と漢字表記文の用字法とを一旦区別し、表記体として統一性のある他の漢字仮名交じり表記文あるいは漢字表記文と比較する方法である。次に、表記体が混淆するということが用字法上どのような影響を与えるのかということを検討するために、表記体混淆文における漢字表記文における用字法と漢字仮名交じり表記文における用字法とを比較するという方法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き、新型コロナウイルスの影響により感染予防の観点から原本調査が実施することができず、資料を収集することができない。既刊の影印やネットワーク上で公開されている画像などで資料を補っているものの十分とは言い難い。さらに、例えば翻刻されている資料については片仮名が小書きであるのか訓点であるのかという微妙な判断は活字ではできず、資料によって直接確認する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに表記体混淆文の研究の視点と分析方法を明確にしたので、文章レベルにおける表記体混淆現象について、表記法及び用字法を他の漢字文及び漢字仮名交じり文と比較する。また、表記体混淆文内部の表記法及び用字法を漢字仮名交じり文及び漢字文と比較をする。表記体混淆文内部の比較には作成したテキストデータを使用する。このようにして研究した結果については随時成果を公表し、また最終的な報告書としてまとめる。
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Causes of Carryover |
本研究の主たる経費が研究資料の調査旅費であるが、新型コロナウイルス感染拡大により長距離移動が制限されるなかにあって調査が実施できない状況であるために研究費を使用できず繰り越すこととなった。今年度はこれまでに収集した資料に加え当初予定していた研究資料の調査を実施し、研究内容の充実を図ってゆく。
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