2021 Fiscal Year Research-status Report
Research Project on Plain Languages for Social Implementation
Project/Area Number |
20K00770
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
臼山 利信 筑波大学, 人文社会系, 教授 (50323225)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | やさしい言語 / やさしい日本語 / 言語サービス / 多言語対応 / 地方自治体 / やさしいロシア語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「やさしい言語」研究の基盤を構築する第一歩として、従来の優れた「やさしい日本語」研究の成果と蓄積を踏まえて、国内外における「やさしい言語」研究の必要性・可能性とその課題を明らかにすることである。 2年目は、日本の自治体の言語サービスにおける傾向と課題を究明するための基礎研究を継続した。特に都道府県レベルの自治体全体の多言語対応状況を把握する必要性から、その一例として栃木県を対象に全自治体(14市11町)のホームページ等の多言語対応状況について調査を進め、初年度には実施しなかった教育機関(小中高)と病院・診療所の多言語対応についても調査を行った。その結果、(1)県内の全自治体のホームページで英語・中国語・韓国語が、6割以上の自治体でポルトガル語・スペイン語が閲覧可能言語になっており、一定の地域的特性が存在すること、(2)「やさしい日本語」を閲覧可能言語に設定している自治体が県内にないこと、(3)多言語対応をしている教育機関が少ないこと(小学校-1校/350校、中学校-1校/161校、高等学校-1校/75校)、(4) 多言語対応をしている病院・診療所が少ないこと(約2,700の病院・診療所の内の2%程度)などが判明した。 また、地方自治体の多言語対応をSDGsの理念・目標・取組と言語政策の理論的な枠組みの両面から検討し、日本人市民及び外国人市民のグローバルシチズンシップ・アイデンティティーの涵養に資する触媒とみなし得るという解釈を導き出した。 さらに、「やさしい言語」創出に向けた予備的作業の個別事例として、弘前大学社会言語学研究室の『地震のことばを知ろう!-「やさしい日本語」で学ぶ100のことば-』(2017年改訂)をロシア語に翻訳した。その他、「やさしいロシア語」の開発に役立つ日本人学習者の語彙的・文法的な誤りに関する論考を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大が収束せず、国内の移動や対面コミュニケーションに制限が生じたことで、調査対象の自治体の訪問や聞き取りインタビューなどのフィールドワークを十分に行うことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究補助員を有効に活用し、引き続きオンライン等で収集・整理した情報資料の分析・考察に力を入れる。また、新型コロナウイルス感染拡大に収束傾向が見えてきたので、調査対象の自治体の訪問や聞き取りインタビューなどのフィールドワークを進める。
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Causes of Carryover |
昨年同様、コロナ禍における本務校の業務状況の負荷などとともに、予定していたフィールドワーク調査を実施することができなかったため。 研究学会発表や学術的意見交換の場の拡充、フィールドワーク調査と研究補助員の雇用などで使用する予定である。
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