2020 Fiscal Year Research-status Report
日本語母語話者の事態描写の「型」に即した「学習にやさしい英語」の研究
Project/Area Number |
20K00794
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Research Institution | Kansai University of International Studies |
Principal Investigator |
伊藤 創 関西国際大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (90644435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲 潔 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (00441618)
岩男 考哲 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30578274)
藤原 康弘 名城大学, 外国語学部, 准教授 (90583427)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 動作主焦点と被動作主焦点 / 受け身文の過剰な産出 / 自動詞文の抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「母語における事態の捉え方・描き方に基づいた自然な形での目標言語の習得」について、以下の3つの問いについて分析・考察を行うものである。すなわち、①日本語母語話者の事態の捉え方・描き方に基づいた自然な英語とはどのようなものか。②英語教育の現場で用いられている教科書・教材においては、日・英語母語話者の事態の捉え方・描き方の違いが、どの程度、どのような形で学習者に提示されているか。③英語教育の教科書・教材は、日本語母語話者の自然な事態の捉え方・描き方に基づいた英語を涵養するように構成されているか。 本年度は、①と②について分析を行なった。①については、日本語母語話者・英語母語話者の事態描写の特徴が特に幼児期にどのように獲得されるかについて、調査を行い、前者が事態の中の共感度の高い参与者に、後者が動作主に焦点を当てて描写を行う傾向が、すでに3歳児の時点で現れていることを明らかにした。これらの研究結果について、国際学会 The International Congress of Infant Studies (ICIS) )2020および日本認知科学会第37回大会にて発表を行なった。②については、高校英語教科書の「Crown English Expression1(三省堂)の本文全ての構文解析を行い、本来日本語母語話者にとって産出が容易であるはずのSV構文をアウトプットする機会が、SVO構文と比べて非常に少ないこと、それが過剰な受け身表現の産出に繋がっている可能性を指摘した。本研究結果は「関西国際大学グローバルコミュニケーション研究叢書2020」に掲載されている(印刷中)。その他研究成果については次ページ以降に掲載。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はデータの収集・分析を主に行う予定にしており、また本年度収集を予定していたものは主に英語教科書であり、データの収集は自体は概ね順調に進んだ。ただ、新型コロナウイルスの影響もあり、十分に研究者間での打ち合わせが行えなかったこと、また教科書以外の発話データなどについては収集ができなかったこともあり、十二分な進捗であったとは言えないが、おおよそ予定していた進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降は、引き続き、教科書分析を行う。現在、上述のEnglish Expression1に引き続き、同書2の本文の構文解析を行なっており、これら二冊分の分析結果により、「英語教育の現場で用いられている教科書・教材においては、日・英語母語話者の事態の捉え方・描き方の違いが、どの程度、どのような形で学習者に提示されているか(上記②)」を検証する。さらに、2022年以降は、英語学習者コーパスの分析との対比から、「英語教育の教科書・教材は、日本語母語話者の自然な事態の捉え方・描き方に基づいた英語を涵養するように構成されているか(上記③)」を検証し、2023年度以降に、より日本語母語話者の持つ事態把握・描写の型に基づいた英語教材試案を提示する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度は、データの収集、分析については概ね順調に進めることができたが、予定していた共同研究者間での打ち合わせ、研究会等が全て遠隔になったこと、また学会発表についても全てオンラインとなったことで、上述の次年度使用額が生じた。オンラインでの打ち合わせ、研究会では十分に分析ができなかった点等を補うため、次年度の対面での研究会を増加させることで不足分を補う予定である。
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Research Products
(8 results)