2021 Fiscal Year Research-status Report
日本語母語話者の事態描写の「型」に即した「学習にやさしい英語」の研究
Project/Area Number |
20K00794
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Research Institution | Kansai University of International Studies |
Principal Investigator |
伊藤 創 関西国際大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (90644435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲 潔 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (00441618)
岩男 考哲 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30578274)
藤原 康弘 名城大学, 外国語学部, 教授 (90583427)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 事態把握 / 事態描写 / 日本人英語 / 国際英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「母語における事態の捉え方・描き方に基づいた自然な形での目標言語の習得」について、以下の3つの問いについて分析・考察を行うものである。すなわち、①日本語母語話者の事態の捉え方・描き方に基づいた自然な英語とはどのようなものか。②英語教育の現場で用いられている教科書・教材においては、日・英語母語話者の事態の捉え方・描き方の違いが、どの程度、どのような形で学習者に提示されているか。③英語教育の教科書・教材は、日本語母語話者の自然な事態の捉え方・描き方に基づいた英語を涵養するように構成されているか。の3点である。 本年度は、①については、特に自動詞の非能格・非対格性に着目し、非典型的な非対格自動で描かれる事態は、他者によって引き起こされた事態であるにも関わらず、それが自律的な事態として自動詞で描くことは学習者の直感に反し、それゆえに動作主を描こうとするために、受け身化が行われる、あるいは、(英語では自然なはずの)自動詞での表現を非文法的と判断してしまうと分析した。本分析については、大学英語教育学会(JACET2021)中部大会にて発表を行ない、同学会のChubu Journalにまとめた。同論文の中で、②、③についても、日本人英学習者が事態を外在的な働きかけを当該の文とは別に表現する傾向にあることから、自動詞文の導入には、そのような言語化の傾向を反映させるべきであることを主張した。現在はこれらを国際英語という観点からどのように発展させていくかについても考察中であり、それらの研究成果については次ページ以降に掲載。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、予定通り、教科書コーパスを用いた構文の配置・提示順等の把握・分析等を行った。具体的には、高等学校英語については、教科書データベース(藤原作)、JAFL、また日本語母語話者の言語使用については、「現代日本語書き言葉均衡コーパス」および、言語普遍的な目標言語の使用について、I-JASを用いて、分析を行った。 教科書データの分析に思いのほか時間を要し、英語教材における英文和訳模範解答の特徴分析については、十分に行うことができなかったが、一方で、当初予定していなかった日本語学習者のデータを分析し、本研究に応用をすることができた。多様な母語背景をもつ日本語学習者が、日本人英語学習者が困難を感じる非対格自動詞の習得に同様に困難を感じることを明らかにした。これについては、2022年度、英語母語話者の使用との比較を加え、さらに検証を精緻化していく予定である。これらの状況から、本年度は、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
次(2022)年度は、予定通り、これまで収集したデータ分析を行う。またこれまで動詞述語文を中心に分析を行ってきたが、主題・コメント構造の文にも分析を拡張し、動詞文、名詞文、形容詞文の三側面から総合的に「学習にやさしい英語」とはどのようなものか、の特定を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響はまだ継続しており、予定していた研究会、出張が少なからずキャンセルとなった。また学会もオンライン開催となり、その分の交通・宿泊費も未使用となった。次年度はシンポジウムも決定し、また国際学会への応募も検討しており、今年度十分に成果発表できなかった分を補う予定にしている。
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Research Products
(7 results)