2023 Fiscal Year Research-status Report
日本語母語話者の事態描写の「型」に即した「学習にやさしい英語」の研究
Project/Area Number |
20K00794
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Research Institution | Kansai University of International Studies |
Principal Investigator |
伊藤 創 関西国際大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (90644435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲 潔 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (00441618)
岩男 考哲 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (30578274)
藤原 康弘 名城大学, 外国語学部, 教授 (90583427)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 受け身文 / 事態把握 / 事態描写 / うなぎ文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「母語における事態の捉え方・描き方に基づいた自然な形での目標言語の習得」について考察を行うものである。 本年度は、日英語母語話者の事態把握・描写が、言語獲得上、いつ頃から獲得されているのかの検証を試みた。ある参加者が他の参加者に対して働きかけを行う事象を描写する際、英語母語話者はaction chainの開始点にいる参加者を最も顕著に捉え、主語として説明する傾向がある。これに対して、日本語の母語話者は最も共感度の高い参加者を最も顕著に捉え、主語として説明する傾向があるが、これ等の傾向が、すでに3歳の時点で、事象のどの参加者に焦点を当てるかについて、日本語と英語の母語話者の子供たちの間に明確な違いがあることを示した。加えて、この違いが日本語の母語話者の子供たちが、認知的および形態的な複雑さにもかかわらず、3歳の時点で受動態を使用できる事実に寄与していることを明らかにした。 また本年度は、母語の事態把握・描写の傾向が第二言語習得にもどのような影響を与えるかについても考察を広げ、日本語に顕著にみられるうなぎ文が、(様々なアジア言語を母語とする)英語学習者においてどの程度見られるかも検証した。その結果、言語モード、熟達度、L1の背景に関わらず、うなぎ文の転移は稀にしか発生しないことが明らかになった。 現在は、文よりも大きな単位で、話し言葉と書き言葉の関係性や理解の難易度の差について、日英語母語話者にどのような違いが見られるかについて検証を開始している。現時点では、日本語母語話者を対象に同一テーマに関する話し言葉と書き言葉のアウトプットのデータを収集し、ここには語彙のレベルや語の出自、読解難易度に大きな違いはないことを示した。24年度は、この調査を発展させ、英語母語話者についても同程度のデータを収集し、談話のレベルでどのような差があるかを明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日英語母語話者の事態把握・描写の違いを、第1、第2言語習得の領域に拡大することができ、一定程度の成果をえた。
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Strategy for Future Research Activity |
日英語母語話者についての事態把握・事態描写の分析については、一定の進捗を得たので、次年度はより大きな談話の単位でのアウトプットにおいて、どのような違いが見られるかに焦点をあて、研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新たに取得した科研費とうまく相乗りさせることで一部、費用を削減できた。一方で、次年度はテキストの分析が必要であり、また今年度拡充した談話単位の分析のため、新たに被験者への謝金が必要となるため、そちらの補填に用いる予定である。
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