2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K00922
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
大川 裕子 上智大学, 文学部, 准教授 (70609073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井黒 忍 大谷大学, 文学部, 准教授 (20387971)
大澤 正昭 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (30113187)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 清代 / 農書 / 浦ボウ農咨 / 馬首農言 / 長江下流低湿地 / 稲作 / 華北乾地農法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、明清農書の分析を通して、中国の伝統農業の実態を実際に則して検討し、中国農業がいかにして環境的制約を乗り越えてきたかという問題を考察することにある。令和2年度は、研究対象地域を長江下流に設定して、清・道光年間に記された『浦ボウ農咨』を中心に取り上げ、低湿地における稲作農業の実態について検討した。研究分担者の大澤正昭・井黒忍、研究協力者の村上陽子とともに『浦ボウ農咨』を精読し、その成果については訳注「浦ボウ農咨試釈」として『上智史学』65号に掲載することができた。また、関連史料を収集する過程で、『浦ボウ農咨』の記載と類似した内容を含む明清期の農書や地方志の存在を把握することができた。これらの農書を読み合わせることにより、太湖沿岸の低湿環境のなかで選択された農業技術の詳細を把握することが可能となった。 さらに、低湿地帯における稲作以外の栽培植物の実態を調査し、大川裕子「長江下流低湿地における水生植物利用の変遷史」(『東洋史研究』第79巻)として発表した。上記の作業を通じて、長江下流低湿地帯の農業が稲を主軸としつつも、その他多様な生産活動により成り立っていたことを理解することができた。 令和2年度後半からは、華北半乾燥地帯における畑作農業の検討を開始し、『浦ボウ農咨』と同時期に山西の黄土地帯を舞台に記された『馬首農言』の精読・分析を開始している。華北農業の分析は、南方農業との比較を行う上で必要不可欠である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
zoomを通じて、研究分担者および研究協力者と頻繁にミーティングや研究会を行い、農書の訳注作業については予定通りに進めることができた。11月には成果として「浦ぼう農咨試釈」(『上智史学』65号)を発表した。本来、現地調査での知見を踏まえた農書の訳注作成を予定していたが、2020年度は、covit-19の世界的流行により、当初予定してた中国長江下流域での農村調査、および農書調査を行うことを断念せざるを得なかった。そこで、1940年代に満鉄調査部が松江地区で行った農村調査の成果を入手し、当時の農作業や農具の情況を理解する助けとした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度末より研究対象を華北畑作地帯に移し、『浦ぼう農咨』と同時期に記された『馬首農言』の検討を開始している。2021年度は、引き続きzoomによる研究会を通して、農書講読作業を続ける予定である。covit-19が収束して中国での現地調査が行える情況であれば、昨年行う予定だった長江下流地区および、華北農村調査を行う。もし、海外調査を行うことが困難であれば、仲介者に依頼して、現地の農村の現状や伝統農業について聞き取り調査を行うつもりである。
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Causes of Carryover |
令和2年度助成金の大半は、当初、中国における現地調査費用に充当する予定であったが、covit-19の流行により、海外調査を行うこと自体が困難となってしまった。 令和3年度以降、感染症の収束情況を見て、調査を再会する予定である。あわせて国内における農村調査に切り替えることも視野に入れていきたい。
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Research Products
(4 results)