2020 Fiscal Year Research-status Report
植民地期インドをめぐる思想の諸相:ヨーロッパの視点とインドの視点の交差
Project/Area Number |
20K00926
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
苅谷 千尋 関西大学, 法学研究所, 委嘱研究員 (30568994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 信彦 関西大学, 経済学部, 教授 (40309208)
角田 俊男 武蔵大学, 人文学部, 教授 (20227458)
安川 隆司 東京経済大学, 経済学部, 教授 (40230213)
長尾 明日香 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (90758319)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ブリテン / インド / 文明と野蛮 / 富の流出 / 功利主義 / 貧困 / 国際秩序構想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イギリスを代表とするヨーロッパの諸思想が、17-20世紀にわたる植民地期インドにおいてどのように利用され、受容され、変容していったのかを明らかにするものである。2020年度は、政治思想、経済思想、国際思想の3つのレイヤーについて、それぞれに研究を進めた。政治思想については研究代表者の苅谷、経済思想については分担者の中澤、安川、長尾が、国際思想については、分担者の角田と、苅谷が担い、研究に着手した。 3月15日にオンライン研究会を開き、苅谷と長尾が研究報告をおこなったほか、他の分担者の進捗状況を報告した。苅谷は、ジェームズ・マッキントッシュの「ボンベイ文芸協会設立にあたって」(1804)を考察し、「文明と野蛮」観念が看取されること、彼が政治経済学の原理に訴えながら文明を定義づけていることを確認した。長尾は、現地の同時代史料やボンベイ大学理事会文書、英語史料等を用いて、ボンベイ管区におけるインド人を対象とした経済学教育の背景と、それに対するインド社会の反応を明らかにした。安川はミル父子の言説の再解釈、中澤はマルサス主義の受容を見据えたガンディー論に取り組んでいる。また、角田はグロティウスとセルデンの対立のなかにヨーロッパ的視点とアジア的視点の対立を読みとった。 研究会を通して、個々の研究の課題点を析出、共有するとともに、レイヤー間の重なりや、ヨーロッパとインド間の受容=応答関係を意識した調整を図った。また、本研究の難所のひとつである、インド側からの視点や応答をどのように把握、分析するのかについて、検討がなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、予期しない新型コロナウイルスへの対応を要し、申請時のエフォートに従った研究活動を行なうことが困難だった。研究会もオンラインでの開催を余儀なくされ、対面での研究会に比して、十分なコミュニケーションが取れたとは言い難い。また、海外への調査、研究会への参加も見送らざるをえなかった。 とはいえ、各自の研究は予定通り、着手できていること、また、限られたものではあったが、オンライン研究会によって進捗と問題点を共有することができた点を了としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降は、個別の研究を深めるだけでなく、レイヤーの特徴をはっきりと浮かび上がらせること、また、レイヤーの重なり、ヨーロッパとインド間の応答、視点の交差という観点を重視したい。特に、最後のインド側の受容、応答についてだが、それを明らかにするテクストの発掘が遅れているため、いっそう、力を入れたいと考えている。 8月ないし9月、それから3月に研究会を開き、個別の研究を持ち寄り、上記の点について検討を重ねることで、本研究の主要課題である、ヨーロッパの視点とインドの視点の交差の有り様を具体化し、最終年度の課題、目指すべき成果を共有したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行により、当初予定していた研究会、海外資料調査などを実施できなかったため。
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Research Products
(5 results)