2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K00936
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安岡 健一 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (20708929)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自分史 / 歴史叙述 / オーラルヒストリー / 社会教育 / アーカイブ / エゴ・ドキュメント |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては、コロナ禍による影響によって、当初予定していた遠隔地への出張を伴う資料調査・聞き取り調査が困難となり、また、計画を進めていた市民と共同での自分史に関するワークショップも断念せざるを得なかった。 そこで、器材面を整えるとともに、勤務地周辺にて可能な範囲での資料収集および先行研究の検討に研究活動の重点を変更し、これまでの研究の公開と次年度以後の研究計画を練り直しに取り組んだ。歴史資料収集に関する制約から、視点を現代に移し、コロナ禍の記録とオーラルヒストリーを実践した。所属大学の授業において、コロナ禍の「緊急事態」の記録としてオーラルヒストリーを実践し、その結果を日本オーラル・ヒストリー学会にて大学院生と共同で報告した。それらの結果、オーラルヒストリーと自分史という方法の重なりと相違点について、より深く研究する必要に気がついたため、この点は今後、歴史叙述に関する論考としてまとめ発表することを目指す。2020年度にはSNS(Facebook)グループとして「コロナ禍のオーラルヒストリー」を発足させたが、有効に機能したとはいえず、方法について再検討する。 研究成果の発表として、自分史という問題領域を発見する契機となった、高度成長期における高齢者の社会活動の歴史について、国際学会で発表を行った。 今後は、移動制限や施設利用が解除され、かつ感染の懸念が十分低下した段階で、自治体史編纂と個人史・自分史を結び付けた事例および社会教育活動として自分史に取り組んだ事例について調査を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍により、予定していた調査研究が大幅な変更を迫られ、従来の計画は文献の読解による課題の精緻化に限定されたため。その一方、コロナ禍の記録(自分史作成・オーラルヒストリー)という現状におうじた課題を新たに組み込んだ点は、新たな発展の機会を得たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の当初計画こそ大幅な変更が必要となったが、資料自体が失われたわけではないため、資料調査を基軸とする点は変更しない。しかし、新たに現代の記録という課題として浮上したコロナ禍のオーラルヒストリーについても取り組みを継続する。また、移動制限が続く場合には、近接する地域において市民との共同事業を実施し、研究の社会的還元を試みる。それも困難である場合には、自分史研究に関するウェブサイトの開設など、何らかの形で研究成果の社会的発表を目指す。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による資料調査の実施が困難だったため、次年度使用額が生じた。この分は調査の実施回数を次年度以後に頻度を増し、また研究成果公開の方法を再検討することで有効に使用していく。
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